労働能力喪失率は、通常、自賠責において認定された後遺障害等級をもとに、労働能力喪失率表を参考として決定されることが多い。
ところが、高次脳機能障害の場合は、外部から障害の有無・程度が認識し難いため、たとえ自賠責において後遺障害等級認定を受けていても、等級評価の妥当性及び労働能力喪失率について、訴訟で争われることが多い点に特徴がある。そこで、本章では、裁判例の検討を通じて、裁判所がどのような事情を考慮して労働能力喪失率を認定しているのかについて検討することとする。
高次脳機能障害の等級認定の考え方と労働能力喪失率は次に示すとおりである。
| 障害認定基準 | 補足的な考え方 | 喪失率 | |
| 別表第1 1級1号 | 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」 | 「身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身のの回り動作に全面的介護を要するもの」 | 100% |
| 別表第1 2級1号 | 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」 | 「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」 | 100% |
| 別表第2 3級3号 | 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」 | 「自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。 しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人間関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」 | 100% |
| 別表第2 5級2号 | 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」 | 「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」 | 79% |
| 別表第2 7級4号 | 「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外に労務に服することができないもの」 | 「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」 | 56% |
| 別表第2 9級10号 | 「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」 | 「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業維持力などに問題があるもの」 | 35% |
自賠責で認定された等級に相当する労働能力喪失率が認定されているケースがほとんどであり、裁判所は自賠責の等級認定と同等の喪失率を認める傾向があると思われる。
もっとも、裁判例の中には、以下のように自賠責等級認定よりも高い喪失率や低い喪失率を認定するケースもみられた。自賠責等級認定と異なる喪失率を認定した理由は、個々の事案によるので、以下各裁判例を検討する。なお、比較に際しては、原則として併合後の等級に対応した喪失率を基準としたが、一般的に労働能力喪失率には影響しないとされている障害の場合(味覚障害、嗅覚障害、外貌醜状)は併合前の等級に対応した喪失率を基準とした。
ア 自賠責認定5級の事案
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裁判例(1)京都地判平成17年12月15日 (自保ジャーナル第1632号) |
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| 年齢 | 43歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 嘱託勤務 |
| 傷害内容 | 左頭頂骨骨折、脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血、急性硬膜外血腫、外傷性てんかん、頚椎椎間板ヘルニア、聴力障害 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号、嗅覚障害12級相当、味覚障害12級相当(併合4級) |
| 比較基準喪失率 | 79%(5級) |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 85% |
| 概要 | 高次脳機能障害等併合4級後遺障害を残す原告の逸失利益算定において、勤務会社は、人格変化に困惑していたが、デザイン能力を評価し解雇しなかった等の事情もあるため就労不能とはいえず、嗅覚・味覚障害は労働能力に影響しないとして、労働能力喪失率は85%と認定した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、後遺障害の認定等級の程度については争わなかったが、労働能力喪失割合は自賠責基準を機械的に当てはめるのではなく実質的に検討すべきであると主張し、
(1)高次脳機能障害により生じた遂行機能障害・人格障害のため、様々な職場トラブルを犯し、突然キレて一切の私物をまとめそのまま退社した事実上の退社以降、自室に閉じこもり、社会との接触をほとんど完全に断つなど、就労の意思・意欲が皆無であること
(2)前頭葉の損傷の予後は極めて悪く将来改善されると医学的に説明することはできないこと
(3)精神障害者の就労には厳しい社会的現実があるため、将来就労できることを前提にして労働能力喪失率を判断すべきではないとして、100%の労働能力喪失率を主張した。
他方、被告は、カルテ等の医証によれば、高次脳機能障害が5級2号に該当するとの自賠責認定は疑問であり、後遺障害としては9級10号に該当すると主張した。
裁判所は、
(1)高次脳機能障害の症状である記憶障害・記銘力障害、地誌的障害、遂行機能障害、注意障害、情動・人格障害等のために、本件事故後会社での勤務において、記憶力や持続性の低下が認められ、協調性にも問題があるため、他の社員らとトラブルが発生し退職した事実が認められるが、原告のデザイン能力は本件事故後も低下しておらず、会社もその能力を高く評価していたのであるから、退職はあくまで自主的になしたものであること
(2)高次脳機能障害者もリハビリによりその能力が一部でも回復する可能性を否定し去ることはできず、勤務先や家族の理解・協力を得ることができれば、作業内容及びその程度に限定はあっても就職して継続的に勤務していくことが不可能とはいえないとし、「原告が完全に就労不能であるとまで評価することはできないのであり、前記後遺障害認定等級を参考にして労働能力喪失割合を判断するのが相当である。」とし、「嗅覚障害及び味覚障害については、これによって直ちに労働能力割合に影響を与えるものではないことも考慮して」、原告の労働能力喪失率は85%と評価するのが相当と判示した。
b 分析
本裁判例は、12級相当の嗅覚障害・味覚障害は労働能力に影響しないと判断しているため、自賠責基準を機械的に当てはめると(併合4級の92%ではなく)5級の79%の労働能力喪失率となるべきところ、それを上回る85%の喪失率を認めた点に特徴がある。
裁判所は、原告が自ら会社を退職したこと、及び、作業内容及びその程度に限定はあっても就職して継続的に勤務していくことが不可能とはいえないことという労働の可能性を伺わせる事情を認定しているが、これは喪失率を100%とする原告の主張を意識したものと思われる。
100%の労働能力喪失率が認められるのは「記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」(3級3号)以上の場合であるため、自賠責認定5級、かつ、事故後現実に稼動したことのある事案において、100%の喪失率を認めさせるのは一般的に困難といえるだろう。
| 裁判例(2)東京地判平成18年3月2日(自保ジャーナル第1650号) | |
| 年齢 | 25歳(事故時) |
| 性別 | 女子 |
| 職業 | ガラス工房勤務(事故時) |
| 傷害内容 | 左前頭骨骨折、両側前頭葉脳挫傷、脳内出血、後頭部挫創、左肩甲骨骨折等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号、嗅覚障害12級、醜状障害7級12号(併合3級) |
| 比較基準喪失率 | 79%(5級) |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 92% |
| 概要 | 25歳女子について、自賠責の認定と同様の等級を認定したが、労働能力喪失率については、5級相当の79%ではなく、4級相当の92%を認定した。(なお、嗅覚障害、醜状障害については労働能力への影響を否定し、後遺障害慰謝料で考慮した。) |
a 上記認定に至った理由
原告は、自賠責において併合3級に認定されている他、さらに、てんかん、嗅覚脱失、左眼の視野狭窄後遺障害もあることを理由に併合2級、喪失率100%を主張した。
他方、被告は、通院期間中の人格水準の低下は顕著ではないこと、易怒性は事故後の様々な精神的ストレスが関与している可能性があること、てんかんは抗てんかん剤によってコントロール可能であること、皮下チタンプレートによる皮下腫瘍の再発可能性が低いことを理由に、9級と喪失率35%を主張し、仮に自賠責認定どおり高次脳機能障害が5級2号に相当するとしても、喪失率は79%とすべきであると主張した。
裁判所は、
(1)「人格障害があり、易度性(ママ)、易興奮性等が認められ、意欲も減退していること」、
(2)「現在は仕事をしておらず、就業しようとしてアルバイトもてんかん発作のため、あるいは対人関係などに疲れ、自ら無理であるとして辞めている」ことから、「労働能力は相当程度喪失している」とする。他方で、
(3)各種検査の結果、原告の知能は正常で、精神心理検査の結果も良好であり、症状固定の診断をした医師も原告が従事していたガラス細工の仕事については、抗てんかん剤投与中で発作の生じる可能性はあるが、状況が許せば可能と考えていたこと、事故後も、
(4)症状固定前から、結局継続していなかったとはいえアルバイトを試みており、当時は、自ら就職したいという意欲が窺えること、
(5)1人暮らしをし、金銭のやりくりをして家事をこなしていたことに鑑み、100%労働能力を喪失したとは認め難いと判示し、労働能力喪失率を92%と認定した。
b 分析
本裁判例は、併合3級の認定をしているが、5級2号の高次脳機能障害以外の後遺障害は労働能力に影響を与えないものと認定されているから、喪失率は5級相当の79%の認定がされるのが通常であるところ、これより高い喪失率である92%を認定している点が特徴的である。本裁判例が高い喪失率を認定した理由は、人格障害や易怒性・易興奮性等が認められ、てんかん発作等のため現在も就業できていないことを重視した点にあると思われる。
また、本裁判例は、各種検査の結果が良好であること等を理由に100%の喪失率までは認められないと判示している。この点は、各種検査の結果が良好であっても8%低下するだけにとどまった裁判例として参考になろう。
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裁判例(3)名古屋地判平成18年1月20日 (自保ジャーナル第1649号) |
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| 年齢 | 26歳(事故時) |
| 性別 | 女子 |
| 職業 | 会社員 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、肺挫傷、下顎骨骨折、右股関節脱臼骨折、両鎖骨骨折、肋骨骨折、右動眼神経麻痺 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号、右動眼神経麻痺併合11級(併合6級) |
| 比較基準喪失率 | 67% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 75% |
| 概要 | 26歳女子大卒会社員が自賠責認定高次脳機能障害7級等併合6級後遺障害を残した事案につき、法廷での尋問結果等をふまえ、自賠責同様高次脳機能障害は7級、併合6級が相当と認定したが、就労を維持するためには非常な困難が伴うとし、労働能力喪失率は5級との中間値に近い75%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、記憶力、持続力、集中力及び問題解決能力が著しく低下したため、原告の高次脳機能障害は5級2号(併合4級)に該当し、少なくとも80%の喪失率が認められるべきと主張した(主位的には喪失率92%を主張)。
他方、被告は、
(1)自賠責において7級4号に認定されていること
(2)尋問が円滑にすすんでおり、意思疎通能力、問題解決能力の半分以上を喪失した状態にあるとまでは認められないこと
(3)記憶力に問題があるにせよ「軽易な労務」には服することができる状態にあること
(4)原告は症状固定後、自らの易怒性を認識しそれを適切に抑えられるようになっていること等から、原告の高次脳機能障害の後遺障害等級は7級が相当と主張した。
裁判所は、
(1)いったんは従前の仕事に復帰したが、仕事の内容について記憶を失っており、新しい仕事も覚えられなかったために退職し、現在は高次機能障害者が集まる作業所で袋詰めなどの単純作業に従事していること
(2)事故後もIQが110前後あり正常域に属していること
(3)本人尋問における供述には記憶がない旨の回答が多かったものの、質問をよく理解し意味を取り違えるようなことはなかったこと
からして、記憶力及び記銘力を除く原告の能力はかなり良好に保たれていることが認められるとしたうえで、「原告の後遺障害等級は、高次脳機能障害が7級4号に該当し、右動眼神経麻痺が併合11級に該当し、これらを併合し、併合第6級に該当するとの自賠責損害調査事務所長の判断を採用するのが相当である」と判示した。
労働能力喪失率については、「(原告の)記憶力及び記銘力の障害の程度が強いことを考慮すると、実際に一般の就労を果たしてこれを維持するには非常な困難が伴うことが認められる。」と認定したうえで、5級との中間値である75%を原告の労働能力喪失率とするのが相当であると判示した。
b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害の等級を自賠責認定と同様の7級(併合6級:喪失率67%)としながら、その後独自に喪失率を検討し、自賠責の等級認定を上回る75%の喪失率を認めた点に特徴がある。裁判所が通常より高い喪失率を認めたのは、本人尋問における供述内容及び供述態度から判明した原告の記憶力・記銘力の障害の程度が強く、就労の継続には非常な困難が伴うことが容易に予想されることを重視したためであろう。
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裁判例(4)横浜地判平成12年8月24日 (自保ジャーナル第1370号) |
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| 年齢 | 53歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | やきとり屋・大人のおもちゃの店の経営 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、外傷性てんかん、左前腕骨骨折、左尺骨偽関節、左膝複雑靱帯損傷、左腓骨神経麻痺、歯牙欠損 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級、その他は不明 |
| 比較基準喪失率 | 56% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号、左尺骨偽関節・左膝同様関節及び左腓骨神経麻痺12級7号(併合4級) |
| 本判例認定喪失率 | 92% |
| 概要 | 自賠責では、高次脳機能障害7級の後遺障害を残した53歳男子について、「原告の労働能力は、本件事故による後遺障害により高度に喪失したと認められるが、軽作業程度の労働をする能力は残存しているものと認められる」として、高次脳機能障害は5級2号(併合4級)とし、労働能力喪失率92%を認めた |
a 上記認定に至った理由
原告は
(1)自賠責の認定等級が7級となったのは、脳外科関係の不充分な診断書に基づいて認定されたからであること
(2)鑑定の結果によれば、原告は知的能力を要する知的労働は不可能であるが、第三者による十分な指導と援助の下で行なう精神・心理的ストレスの少ない軽作業について短時間行なうことは可能とされており、医師も「誰かの監督下にあれば、封筒はりやコード巻きなどの仕事をアルバイト的に家でやることは可能である」と診断しているが、他人の充分な指導と援助の下での精神的・心理的ストレスの少ない短時間のみ行なう単純な軽作業を仕事の中で現実に想定することは極めて困難であること
から、原告が就労しうる労働は存在しないとし、高次脳機能障害は2級3号(少なくとも3級3号)に該当すると主張した。
他方、被告は、
(1)本件事故に起因する意識障害については、本件事故後に軽快改善されたことが明らかであること
(2)自賠責認定が7級となったのは、詳しい診療記録等がない状態のものであり、てんかん発作も全く現出していないこと
も考えあわせれば原告の後遺障害は9級10号を越えるものではないと主張した。
裁判所は、鑑定の結果、知的能力を要する労働や複雑な人間関係が存在するような仕事は不可能であるが、精神的・心理的ストレスが少ない単純な作業は短時間可能であるとされていることから、「軽作業程度の労働をする能力は残存しているものと認められる」とし、高次脳機能障害について5級2号に該当するとして、喪失率を92%と判示した。
b 分析
本裁判例は、「他人の充分な指導と援助の下で行なう、精神的・心理的ストレスが少なく、かつ、短時間で終わる単純な軽作業」は存在しないため、原告の労働能力喪失率は100%であるという原告の主張を退け、自賠責では7級と認定された高次脳機能障害を5級2号(併合4級)と認定し、92%の喪失率を認めた点に特徴がある。
裁判所は、「総合的に判断して知的労働は不可能であると思われるが、単純な軽作業は不可能ではないと考える。」「労働に関しては知的能力を必要とする高度のものや、複雑な人間関係が存在するような仕事は不可能と思われ、精神・心理的ストレスが少ない単純な作業で短時間なら可能と思われる。しかし、充分な本人への指導や援助が必要と考えられる。」という鑑定の結果を重視しているものと思われる。
| 裁判例(5)仙台地判平成20年3月26日(自保ジャーナル第1734号) | |
| 年齢 | 55歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 事故時は無職。事故の約半年前に早期退職し、再就職のためにマンション管理士試験等の準備をしていた。再就職までのつなぎとして事故の約3ヶ月後から市の外郭団体であるセンターに勤務。 |
| 傷害内容 | 左頭骨骨折、左硬膜外血腫、右硬膜下血腫、右側頭葉部脳挫傷、左鎖骨骨折 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号、左鎖骨の変形障害12級5号、左耳難聴・耳鳴り12級(併合6級) |
| 比較基準喪失率 | 67% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 73% |
| 概要 | 55歳男性について、精神・神経症状等を考慮して実際に就労することには非常な困難を伴うだろうことは容易に想像できるとし、67%(6級相当)と79%(5級相当)の中間値である73%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、自賠責の判断は事故後2年3ヶ月後に脳室の拡大・脳萎縮などの画像所見は認められなかったなどという画像上の所見を重視したものであり、その後に自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会が発表した「高次脳機能障害の程度を判断するにあたって社会的行動障害の有無・程度を重視するべき」との最新の医学的知見に反しているとして、5級2号に該当する高次脳機能障害(併合4級)を主張し、少なくとも労働能力の90%が失われていると主張していた。
この点、裁判所は、「(高次脳機能障害の)程度は意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力のどれか1つの能力が大部分喪失したとか、2つ以上の能力が相当程度喪失したとみるまではできない」などとし、自賠責の認定どおりに7級4号と判断した。
本裁判例では、以下のような事実が認定されている。
すなわち、原告は、
(1)事故以前は温厚な人柄であり、健康状態や精神状態に問題があった様子は窺われないが、社会適応性の障害により友達付き合いが困難になった、
(2)言葉をはっきり言わなかったり、話しの内容がころころ変わったり、流れと脈絡のないことを突然話し出すため、職員、センター利用者、家族との会話が成り立たないことがある、
(3)職員からの引き継ぎ事項をすぐに忘れる、
(4)職員の言うことを聞き入れない、
(5)感情の起伏が激しく、突然家族や職員に対して攻撃的な態度をとることがある(他の職員との衝突をさけるため、他の職員とは必要なこと以外は話さないようにしている)、
(6)「2000-1550=450」程度の暗算ができない、
(7)以前はできたブラインドタッチができない、
(8)ホワイトボードへの書き忘れ、誤記、鍵の閉め忘れといった単純ミスを繰り返す、
(9)利用者におこされるまで居眠りをし、いつも眠そうでいる、
(10)それまで振るったことがなかった暴力を家族に振るう、
(11)兄妹との付き合い、町内会との活動を拒み、自宅に引きこもっている、
といった事実が認定されている。
本裁判例はこのような事実を認定した上で、労働能力喪失率について、「精神・神経症状を考慮すると、実際に就労することには非常な困難を伴うだろうことは容易に想像できる。
現在の勤務を続けられているのは、家族の援助と、使用者が市の外郭団体であり、原告の状況に配慮をしているところがあろうことも容易に想像できる。
このことを考慮すると、実務上、後遺障害等級6級の労働能力喪失割合は67%とされているが、本件では、通常は後遺障害等級5級の労働能力喪失割合とされる79%の中間値である73%を労働能力喪失割合とするのが相当である」と判示した。
b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害の等級を自賠責認定と同様の7級(併合6級:喪失率67%)としながら、その後独自に喪失率を検討し、自賠責の等級認定を上回る73%の喪失率を認めた点に特徴がある。
本裁判例が6級相当の喪失率よりも高い喪失率を認めたのは、原告のコミュニケーション能力が著しく低く、業務の遂行に非常な困難を伴うだろうことが容易に想像できる点を重視したためであろう。
| 裁判例(6)東京地判平成8年2月28日(自保ジャーナル第1177号) | |
| 年齢 | 60歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 兼業農家従事者(事故時) |
| 傷害内容 | 脳挫傷、頭蓋骨骨折等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級 |
| 比較基準喪失率 | 56% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 70% |
| 概要 | 60歳男性について、5級に該当する程度にまでは至っていないものの、7級としては重篤な部類に属しており、今後外部に勤務して収入を得ることはほとんど不可能として、労働能力喪失率は70%と認定した。 |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、後遺障害等級については特段の理由を述べることなく自賠責の認定どおりに7級を認定した。
労働能力喪失率については、以下のとおり判示した。
すなわち、「原告の後遺障害は、右不全麻痺が生じ、知能テスト等も著明な機能低下が認められる高次脳機能障害であること、症候性てんかんに対する抗けいれん剤の投与の必要がある状態であること、医師から軽易な労務以外の労務は困難であると診断されており、原告が、1人で日常生活を送ることは極めて困難な状態であることが認められる。
さらに、本訴訟における原告本人尋問においても、原告は、ほとんど尋問にも耐えられない状態であることが認められる。以上によれば、原告の後遺障害の程度は、「終身にわたり極めて軽易な労務の外服することができないもの」という後遺障害等級5級に該当する程度にまでは至っていないものの、後遺障害等級7級としては重篤な部類に属していると認められ、原告が今後外部に勤務して収入を得ることはほとんど不可能であると認められることも考慮すると、原告は、その70%の労働能力を喪失したと認めるのが相当である。」と判示した。
b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害の等級を自賠責認定と同様の7級(喪失率56%相当)としながらも、自賠責の等級認定を大きく上回る70%の喪失率を認めた点に特徴がある。
通常よりも高い喪失率を認めた理由は、
(1)症候性てんかんに対する抗けいれん剤の投与の必要がある状態であることや、
(2)原告本人尋問において、原告がほとんど尋問に耐えられない状態であったことを重視した点にあると思われる。
ウ 自賠責認定9級の事案
調査した限りでは見当たらなかった。
ア 自賠責認定1級の事案
今回調査した範囲では、自賠責等級認定1級の事案で、100%未満の喪失率が認められた事案はみられなかった。なお、さいたま地裁平成18年8月4日(自保ジャーナル第1682号)は、自賠責認定1級3号の高次脳機能障害を残した事案において、労働能力喪失率65%としたが、これは本件事故前に後遺障害等級9級10号に相当する脳梗塞の障害があったために喪失率が減らされたものであるため、実質的な喪失率は100%と認定しているものと考えられる。
イ 自賠責認定2級の事案
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裁判例(7)大阪地堺支部判平成18年4月14日 (自保ジャーナル第1662号) |
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| 年齢 | 25歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 電車車掌 |
| 傷害内容 | 全身打撲、脳挫傷、急性硬膜下血腫、意識障害、左大腿骨骨折 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害2級3号 |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 本判例認定喪失率 | 79% |
| 概要 | 25歳男子電車車掌が、自賠責認定高次脳機能障害2級3号後遺障害を残し、配転復職している事案につき、脳の器質的障害で高次脳機能障害を残すが、ADLは自立、単身通勤できる等の事情から、労働能力喪失率を79%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、
(1)復職は会社の福祉的配慮にすぎないこと
(2)現在の仕事も十分にこなせず仕事を辞めたいと口にしており、いつまで就業できるかわからないこと
(3)退職すれば他に就職できる可能性はほとんどないこと
(4)障害に回復の見込みはないこと
から、労働能力喪失率は100%と主張した。
他方、被告は、
(1)原告は一人で電車に乗って職場に通勤し、週5日午前9時から午後5時まで働いているのであるから「生命維持に必要な身の回り処理の動作について随時介護を要するもの」に該当しないこと
(2)知能検査の成績によれば、非言語性の思考力や構成能力、判断力などの知的能力が高く、単純肉体労働で障害者支援の福祉的な労働環境においてようやく就労が可能なレベルにとまるとは考えられないこと
(3)標準失語症検査の成績からは、原告の会話能力の障害はそれほど重度ではないこと
から、後遺障害等級が5級よりも重いことはありえないとし、労働能力喪失率は72%よりも制限的に認めるべきと主張した。
裁判所は、
(1)買い物だけでなく預金解約やカードローンなどの手続を一人でしているのみならず、職場において上司らと「もう少し頑張ってみてはどうか」などという就業継続についての会話をしていることから意思疎通能力が全て失われたとはいえないが、仕事のやり方を教えてもできなかったことや、家族との会話においても話が複雑になると途中でやめてしまうことからして、職場における職務遂行のための会話が十分にできているとは認められず、意思疎通能力は半分以上失われていると認められること
(2)職場において通常予定されている職務につき、教えられた手順どおりに仕事を進められなかったこと、日常生活においてもバイクに乗りたいと言ったり、短絡的に買い物をするなど、状況を見通した判断・行動が取れていないことからして、問題解決能力はその半分以上が失われていると認められること
(3)職場において与えられた簡易な仕事についてはこれを遂行できものと推認されるが、日常生活の金銭管理においては短絡的な消費に走っていることから、作業負荷に対する持続力・持久力が幾分か減弱していると認められること
(4)ほとんど出勤していること、深夜とはいえ、帰宅するのに夜行バスやタクシーを利用するなど社会的に適応した行動をとっていること、家族に対して言い出したら聞かなくなることはあっても、感情を爆発させることはないため、社会行動能力はほとんど失われていないと認められること
(5)配転復職後に実際に遂行しているのは、極めて簡易な作業であり、通常の業務を支障なく遂行するには他人の頻繁な指示により誤りを訂正しなければならない状況にあること
(6)日常生活上の食事・入浴・用便・更衣など身の回りのことは自分でできており、一人で通勤し就業後は遊興して帰宅するという生活を送っていることから介護が随時必要とはいえないこと
から、原告は高次脳機能障害のため、極めて簡易な労務のほか服することができないものと解されるから5級2号に該当し、労働能力喪失率を79%と判示した。
b 分析
本裁判例は、自賠責で2級3号と認定された高次脳機能障害を5級2号に該当するとして79%の喪失率を認めた点に特徴がある。
2級3号は「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声かけや看視を欠かすことができない」状態であるため、預金解約やカードローンなどの手続を一人で行い、自宅まで夜行バスやタクシーを利用して帰宅している原告について、裁判所が2級3号の後遺障害を認めなかった点については、特に異論はないものと思われる。裁判所は、3級3号(「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、介助なしでも日常の動作を行なえる。
しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」)も認めず、原告の高次脳機能障害は5級2号に相当するとしたが、これは、証拠から認定可能な事実からして、原告に就労可能性が全くないと考えるのは困難だったためと考えられる。
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裁判例(8)横浜地判平成18年11月8日 (自保ジャーナル第1676号) |
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| 年齢 | 52歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 会社員 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、頭蓋骨骨折、右第四指不全断裂、右橈骨遠位端骨折、両膝挫創、右膝前十字靱帯損傷、右手関節・右手指拘縮、右外傷性視神経症 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号、右視野欠損13級2号、左膝関節機能障害12級7号、右手指機能障害11級9号(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号、右視野欠損13級2号、左膝関節機能障害12級7号、右手指機能障害11級9号(併合4級) |
| 本判例認定喪失率 | 92% |
| 概要 | 自賠責では高次脳機能障害3級等併合2級後遺障害を残し復職したものの、2年で解雇された52歳男子会社員について、「単純な繰り返し作業をすることはできるが、新しい作業や職場に対する適応性にかけており、就労の維持には職場の理解と援助が必要である」として、高次脳機能障害は5級(併合4級)とし、労働能力喪失率は92%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、高次脳機能障害は3級3号に該当し、併合第2級の後遺障害を負ったと主張した。
他方、被告は、
(1)WAIS-R検査所見で著名な改善がみられること
(2)原告が事故後元の職場に復帰していること
(3)労災では後遺障害等級第8級の認定にとまっていることなどを指摘し、原告の高次脳機能障害は後遺障害等級第9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)が相当であり、仮にこれより重いものと評価されるとしても、後遺障害等級第7級4号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの)を上回るものではありえないと主張した。
裁判所は、
(1)原告が「人と話をしていてもすぐに忘れる。自分で判断する能力に欠け妻に依存しがちである。」と述べていること、
(2)原告が自家用車と電車を乗り継いで一人で通勤していたこと、
(3)復職後は書類のファイリングなどの仕事を単独でしていたが、集計作業などは補助者が必要であったこと、
(4)通勤だけではなく買い物の際も自家用車を運転していることなどを認定したうえで、「原告は、単純な繰り返し作業をすることはできるが、新しい作業や職場に対する適応性にはかけており、就労の維持には職場の理解と援助が必要であるから、原告の高次脳機能障害は、特に軽易な労務以外の労務に服することはできないもの
として、後遺障害等級第5級2号に相当するというべきである。」と判断した。
b 分析
本裁判例は、自賠責等級認定3級(併合2級)の高次脳機能障害の後遺障害を残した事案において、高次脳機能障害を5級相当(併合4級)と認定し92%の労働能力喪失率を認めた点に特徴がある。
3級3号(労働能力喪失率100%)の高次脳機能障害は「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、介助なしでも日常の動作を行なえる。
しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」であることが必要であるところ、原告は事故後元の職場に復帰して軽作業に従事しているため、「一般就労が全くできないか、困難なもの」とは認めにくい。裁判所が、原告の高次脳機能障害の程度を5級相当として、併合4級相当の92%の喪失率を認定したのは、原告が復職したという事実を重視したためと考えられる。
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裁判例(9)広島高裁松江支部判平成16年11月5日 (自保ジャーナル第1577号) |
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| 年齢 | 20歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 会社員 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、左大腿骨折 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号 |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 本判例認定喪失率 | 79% |
| 判旨 | 20歳男子会社員が、自賠責認定高次脳機能障害3級3号を残した事案につき、定時制高校に通学・卒業し、一人で外出、買い物をしている等から、就労可能性を否定することはできず、後遺障害は5級2号とし、労働能力喪失率は79%と認定した |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、
(1)自動車教習所に通うほか、定時制の工業高校に通学し卒業していること
(2)一人で徒歩あるいは自転車に乗って外出し、買い物をしていること
から、就労可能性を否定することはできず、後遺障害等級は、特に軽易な労務以外の労務に服することができないものとして5級2号に相当すると認めるのが相当であるとして、100%の労働能力喪失率を認めた原判決を変更し、労働能力喪失率を79%と判示した。
b 分析
本裁判例は、3級3号の高次脳機能障害(「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、介助なしでも日常の動作を行なえる。
しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」)を認定して労働能力喪失率100%とした一審判決と異なり、原告の高次脳機能障害を5級2号と判断して79%の喪失率を認めた点に特徴がある。
もっとも、本裁判例において、就労可能性を否定できない事情として挙げられているのは「定時制の工業高校に通学し卒業していること、一人で徒歩あるいは自転車に乗って外出し、買い物をすることができること」等の原告の状況のみである点に注意されたい。
| 裁判例(10)岡山地裁倉敷支部平成18年11月14日(自保ジャーナル第1680号) | |
| 年齢 | 28歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 不明 |
| 傷害内容 | 頭部打撲、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、右頬骨骨折、両側慢性硬膜下出血脳挫傷、びまん性軸索損傷等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号、右同名半盲9級3号(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号、右同名半盲9級3号(併合4級) |
| 本判例認定喪失率 | 92% |
| 備考 | 28歳男性について、症状固定後に後遺障害が改善していることを理由に、4級相当の92%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、
(1)症状固定後における各種検査(改訂長谷川式簡易知能評価スケール、HTP描画テスト)の結果が概ね改善傾向を示していること、
(2)症状固定後の診断結果を記載したカルテ等には、記憶力、易刺激性、衝動性、意欲・自発性、持続力・持久力がある程度改善したことを示す記載があること、
(3)日常生活能力もある程度回復していること、
(4)医師が、症状固定以降に改善しており、今後も改善する可能性がある旨の見解を出していること
等の事情を総合して、症状固定日とされている平成13年11月13日時点では3級3号該当程度であったが、現時点(口頭弁論終結時)においては5級2号(併合4級)程度であると判示した。
b 分析
本裁判例は、前記(1)ないし(4)の事情を総合考慮した上で、症状固定後に後遺障害が改善しているとして自賠責の認定した等級よりも低い等級を認定している点に特徴がある。
また、3名の医師の意見に分析を加えている点にも特徴がある。
すなわち、本裁判例は、まず、「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」について、
(1)平成13年8月29日付けA医師作成のもの、
(2)平成14年3月27日付けB医師作成のもの、
及び(3)平成15年7月9日付けC医師作成のもの
を比較し、(1)と(2)ではほとんどの項目で改善しているとされているのに対し、(2)と(3)ではほとんどの項目で大きく悪化し、(3)は(2)のみならず(1)よりも悪いものとされている点をあげ、この点は不自然な変化というほかはなく、(3)を作成したC医師が他の医師と比べて特に厳しい基準に基づいて所見を述べたものと解さざるを得ず、C医師の意見は後遺障害が改善しているかどうかの参考にならないと判示している。
さらに、本裁判例は、労働能力に関する3名の医師の見解についても、C医師の意見は他の医師と比べて厳しい基準に基づいて見解を述べた可能性がある点を指摘してC医師の意見を排斥し、ある程度の労働能力の存在を認める他の2名の医師の見解を採用し、「現時点においては、周囲の配慮の下で特に軽易な労務を行う能力は有しているというものと理解すべきである」と判断している。
本裁判例において、このような医師らの見解に対する判断は、自賠責認定よりも低い等級・喪失率を認定したことに、少なからず影響を与えたものと思われる。
| 裁判例(11)大阪地裁平成18年11月16日(自保ジャーナル第1700号) | |
| 年齢 | 18歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 高校生(事故時) |
| 傷害内容 | 急性硬膜外血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号、嗅覚障害12級、顔面醜状14級(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 95% |
| 備考 | 18歳男性について、今後一定の収入が得られる可能性があることを考慮して、95%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、治療経過、後遺障害等級が併合2級と認定されていること、現に人格の変化及び認知障害が合わさって社会生活適応能力の障害が大きく、改善の見込みのない状況であること等から判断して、労働能力喪失率は100%であると主張した。
他方、被告は、
(1)「性格変化」については、易怒性等は特に母に対して見られること、
(2)「作業遂行能力面での障害」については、カルテ上に記載されているアルバイト、修学状況、リハビリ等での通院状況、職業リハビリの状況、就職先探しの状況などからみて相応の能力があること、
(3)原告は自動車を運転しておりそれに必要な判断力があると見られること、
(4)原告は本人尋問の際、1時間以上にわたり、主尋問、反対尋問のいずれにも丁寧かつ真摯に証言し、その内容においても大きな矛盾はなく、また、その内容においても労働に対する意欲を感じられたこと、
(5)長谷川式知能テストが30点満点中27点であり、また全IQが58から96まで回復しており、将来の回復の可能性は大きいこと、(6)現在でも指導監督する者さえいれば労働は可能であること
等の事情を考慮し、等級は5級2号、労働能力喪失率は79%であると主張した。
裁判所は、
(1)原告が入院中も退院後も家族に暴言を吐いたり刃物を向けたり、家財を損傷したりすること等があったこと、作業療法報告書ではストレス耐性が低いとされ、バイトでのトラブル内容から感情コントロールの低下もあるとされていること、
(2)原告が事故前に働いたことのあるコンビニエンスストアの雇い主はいろいろな問題を大目に見てくれていたにもかかわらず限界であるとして辞めざるを得なくなったこと、
(3)原告は自動車の運転自体はしているが、治療中から約2年9ヶ月の間に、加害事故2件、自損事故5件を起こしていること、
(4)原告の本人尋問の際、「だらしがないことキレることなど自己の問題点を述べ、家族への暴言暴力について認めつつも、表情等を変えることが無く恥じたり反省している様子は窺えず、就職先を探すことについて自動車の運転適正がある旨述べる等、そのニュアンスとしては正常な状態とは思えないものがあった」こと
等を認定した。
その上で、原告は、「ストレス耐性が低く、易怒性、飽きっぽさがあり、キレる時には粗暴な言動に及ぶものであり、そのような自己の状況は把握しているが、自分自身では適切な対応ができていないし、リハビリも続かない状況であり、現に、普通のアルバイトは続かなかった」ことに加えて、(2)「脳損傷の状況が相当重いものと見られる」ことからして、自賠責が「高次脳機能障害について3級3号としていることについて(併合2級の結論を含め)、首肯できる。」と判示した。
次に、労働能力喪失率については、(1)「就労意欲自体はある」、(2)「事故後に働いたコンビニエンスストアの雇用主のような後見的な環境があり、しかも、就労内容が、対人的な交渉が少なく随時的で、出来高に応じるなど従量的であるようなかなり限定的なものであり、さらに、原告がリハビリ等を通じて持続性を獲得できれば、一定の収入が得られる可能性がある」とした上で、原告の現状と(1)(2)の可能性とを考慮して、労働能力喪失率を95%と判示した。
b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害の等級を自賠責認定と同様の3級3号(併合2級:喪失率100%)としながら、その後独自に喪失率を検討し、自賠責の等級認定を下回る95%の喪失率を認定した点に特徴がある。
通常よりも低い喪失率を認定した理由は、
(1)原告が複数のアルバイトを試みるなど就労意欲自体はあること、
(2)以前の就業先の雇用主のような後見的な役割を果たす雇用主の下で就業する可能性があること、
(3)原告の年齢が比較的若年でありリハビリ等による持続力の回復を期待できること
などを考慮した点にあるものと思われる。
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裁判例(12)大阪地裁平成17年4月13日 (自保ジャーナル第1594号) |
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| 年齢 | 38歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 設計担当会社員(事故時) |
| 傷害内容 | 頭蓋骨骨折、くも膜下出血等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号 |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 88% |
| 概要 | 38歳男性について、相当の援助があれば単純な繰り返し作業ができること等を総合考慮して、3級相当の100%と5級相当の79%の中間にある88%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、原告の現状について、
(1)「作業動作の側面を見ると、絵を描いたり、日曜大工程度の木工をするといった作業、その準備や掃除、道具を探したり扱ったりという作業は、ときに指示を得れば可能であるものの、作業そのものへの意欲やその意味を把握できていないという根本的な問題がある」、
(2)「言語性知能は、全体IQが大卒の割には低く、意味の把握や暗喩・比喩などが理解できなかったり、抽象的思考力は最終検査でも低下傾向があり、会話も困難な場面がしばしばあり、文字もひらがなが書けなくなることもみられる」、
(3)「日常生活面では、自宅周辺は自転車で外出・移動可能であり、電車の移動はできることが多く、子供の送迎や簡単な家事などはできるが、他方、連続作業や並行作業等の複雑高度な作業、金や時間の計算、身だしなみなど少しでも高度な要素を帯びる作業ができないのはもとより、時折、電車移動の際、目的地がわからなくなったり、待ち合わせができなかったり、スーパーの試食品を食べ続けたり、極端に怒鳴り散らす等の異常な行動があることがあり、8割方自立していて、生命維持に必要な身辺動作は概ね可能なものの、いつ何をするかわからないという問題点が残存する」、
(4)「ビデオ撮影されていた原告は、妻との会話は最低限であるとされながらも、子供と遊ぶことができるし、挨拶ができないとされながらも、他人に会釈する姿が撮影されて」いる、
といった事実を認定した。
また、就労能力については、
(1)(2人の医師の意見をもとにすると)「単純軽作業を行うについては、意味内容や見通しなどについて相当の援助を得れば、可能であると考える余地は残されている。但し、原告の障害は極めて複雑で、時折、できていた作業ができなくなったり、他人とトラブルを引き起こすような場面があることがあるようであるから、日常においても、介助を要する場面がないとはいえないと考えられる。」
(2)原告は「自分が以前は設計士であって、相当に誇りを持って仕事をしていたことは自体は自覚していて、元の業務に戻りたいという抽象的な願望は有しているようであるが、そのためのリハビリ等については全く意味の把握も意欲もなく、好きなことは行うが、その余のことにはむしろ拒否的・閉鎖的態度を取っており(このような拒否的な態度は複数の医師が看取している。)、結局、現時点でも就労するに至っていない。」
(3)「そうすると、就労可能性があるかどうかは、各業務遂行能力を多面的に検討して判断せざるを得ない。」と判断し、以下のように、労災の認定基準である4能力(意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・集中力、社会行動能力)の側面からの検討を加えた。
すなわち、
(1)意思疎通能力は、困難であるが援助があればできるレベル(CとDの中間レベル)、
(2)問題解決能力は、困難はあるが多少の援助があればできるレベル(Cレベル)、
(3)作業負荷に対する持続力・集中力は、援助を得た上で持続できても半日程度が可能かどうかというところで、それ以上は困難というレベル(EとFの中間レベル)、
(4)社会行動能力は、障害に起因する非常に不適切な行動がしばしば認められ、作業に支障が生じることがあるというレベル(EとFの中間レベル)であると判断した。
本裁判例は以上検討した上で、「4能力については、概ねCからFレベルとばらつきがあり、単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労(但し、その業種も限定されたものとなる可能性がある。)も可能と解する余地を否定できないが、但し、環境変化や作業の流れなどに対する予測能力や理解能力の不足、ないしは持続力の不足や意思疎通能力の不足のため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されている上、時折の異常行動等に見られる社会行動能力の欠如により、賃金を具体的に得るという意味での一般就労の維持には(隠れた障害としての高次脳機能障害についての)職場の相当深い理解及び寛容、援助を欠かすことができないと考えられる。
これらを総合するときには、後遺障害3級(100%)と認定することにも、同5級(79%)と認定することにも躊躇を覚え、後記のとおり、大卒就労能力を前提とするときには、なお、その能力の88%(残存能力1割強)を喪失したものと認めるのが相当である。」と判示した。
b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害の等級を自賠責認定と同様の3級3号(喪失率100%)としながら、その後独自に喪失率を検討し、自賠責の等級認定を下回る88%の喪失率を認定した点に特徴がある。
低い喪失率を認定したのは、単純繰り返し作業であれば就労可能であることを重視したためであろう。
本裁判例は、「就労能力」について、具体的な作業療法の状況、言語・記銘力等のテスト、及び2名の医師の意見等の検討に加えて、労災の認定基準である前記4能力を検討するという順序で判断している点が特徴的であり、「就労能力」の認定方法を知る上で参考になろう。
エ 自賠責認定5級の事案
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裁判例(13)東京地判平成12年12月12日 (自保ジャーナル第1387号) |
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| 年齢 | 21歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 大学生 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、頭蓋骨骨折、急性硬膜血腫 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例認定喪失率 | 60% |
| 概要 | 21歳大学生が、自賠責認定高次脳機能障害5級2号を残した事案につき、左手に軽度の振せん以外異常は見られず四肢の運動麻痺もないが、会話の声も小さく、認知障害が軽度に残存し、就職等にも努力が要するものとし、労働能力喪失率を60%と認定した |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、
(1)四肢の運動麻痺はなく、左手に軽度の振せんを認める以外は特に異常はなく、歩行や日常生活動作の障害は認められないこと
(2)会話中の声が小さく、認知障害、脱抑制、発動性の低下などによる意欲やコミュニケーション上の障害が軽度に認められること
(3)事故後に卒業論文を提出し、日常生活に支障はないが、就職の点では筆記試験に合格しても面接試験で不採用になるなど未だに安定した職には就けず、職業訓練校に通うなど努力はしているものの現時点において就職の見込みは立っていないこと
(4)感情抑制ができず、コミュニケーションをうまく取れないため対人関係でも問題を起こしがちであること
から、「原告は、家庭内における日常生活には支障はなく、潜在的な知的能力はあるが、社会の中で適応し、自己の能力を発揮する、とりわけ仕事に就くことには今しばらくの努力を要するものと認められ、また、就職した際も安定して就業できるかは疑問であり、原告の担当できる職務内容もおのずから相当程度限定されざるを得ないと思料される」と判示し、原告が本件事故当時大学生であり、大学卒業後は当然大学で見につけた専門的知識等を活用して社会に貢献し、右貢献に相応しい収入を得られたであろうことからすれば、後遺障害による労働能力喪失率は、原告の日常生活上の不都合よりも相当大きなものと評価すべきであるとして、労働能力喪失率60%と判示した。
b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害について具体的な等級に言及することなく、自賠責認定等級を下回る労働能力喪失率を判示している点に特徴がある。「後遺障害による労働能力喪失率は、原告の日常生活上の不都合よりも相当大きなもの」と判示したうえで、自賠責認定等級を下回る60%の喪失率を認定していることからすると、コミュニケーション上の障害が軽度に過ぎず、潜在的な知的能力がある点を重視したものと思われる。
| 裁判例(14)京都地判平成16年2月18日(自保ジャーナル第1572号) | |
| 年齢 | 38歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 学習塾教務職(事故時) |
| 傷害内容 | 外傷性くも膜下出血、右頭部挫傷、右大腿骨転子下骨折、左脛腓骨骨折等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号、右股関節の機能障害12級7号、左下肢短縮13級9号(併合4級) |
| 比較基準喪失率 | 92% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害7級4号、右股関節の機能障害12級7号、左下肢短縮13級9号(併合6級) |
| 本判例認定喪失率 | 67% |
| 概要 | 38歳男性について、当初の症状固定の診断以後、精神症状が相当程度改善していることに加え、原告が本人尋問の期日に出頭しなかった事情をも考えあわせ、67%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、自賠責の認定した等級(併合4級)に相当する92%の喪失率を主張した。
他方、被告は、
(1)平成12年の症状固定診断以降、カルテの記載上かなり症状が改善しており、
(2)そうであれば原告の現在の症状につき鑑定等の方法で吟味する必要があるにもかかわらず、本人尋問期日の不出頭という原告の非協力により、被告側が立証を事実上行うことができないという点は、斟酌されるべき事情である
などとし、原告の症状が相当程度回復していることを前提に判断されるべきと主張した。
裁判所は、まず自賠責保険が原告の精神症状を5級2号と認定したことについて検討し、「症状固定診断当時の原告の症状に照らすと、原告は、作業能力、論理的思考、器用さの低下のため、他人の頻繁な指示がなくては労務の遂行ができず、また、集中力の低下のため、労務遂行の巧緻性や持続力において平均人よりも著しく劣る状態にあったものと推認されるから、自賠責保険が、原告の精神症状が後遺障害等級5級2号に該当すると判断したこと自体は適切であったというべきである。」と判示した。
その上で、裁判所は、症状固定診断以降の原告の症状について、
(1)症状固定前の複数のカルテには、医師が原告の症状をどのように理解すべきか迷っていたことを窺わせる記載があること、
(2)症状固定の約5ヶ月前の時点で、医師が注意力を中心に症状が改善する可能性はあると思われる旨診断していたこと、
(3)症状固定の約6ヶ月前に実施された脳波検査では、びまん性に遅いアルファ化がみられたことから軽度異常と診断されたものの、症状固定直後の時点では正常範囲内と診断されたこと、
(4)原告は、症状固定から1年6ヶ月後、以前症状固定診断を担当した医師の診察を受けた際、「この1年間、自宅でひたすら数学の図形の問題を解いていた、自分でも、だいぶ知能指数が向上し、回復したように思うと説明し、」一方、同医師も「症状固定診断時に比べ、表情があり、反応も早く、会話もスムーズになっている、自発的な発言も多い、当初人格変化と思われた無為自閉性、発動性の低下は現在改善が見られている、複雑な計算もできるようになったとのことで、知能指数も向上した印象であると、若干の驚きを込めて、カルテにその所見を記載している」こと
などの事情にかんがみると、原告の症状は「現時点では相当程度回復している可能性が高いものと考えられる」と判示した。
さらに、(5)原告の症状が相当程度回復している可能性が高いにもかかわらず「原告が本人尋問の期日に出頭せず、また、鑑定の実施も事実上不可能となったため、原告の現在の状態を認識することが甚だ困難な状況にあるという事情も考慮し、「前記の自賠責保険の認定をそのまま採用することは、相当でないと言わざるを得ない」とした上で、7級4号に該当すると判示した。
b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害の等級について、症状固定診断以後の回復を理由に、自賠責認定より低い等級を認定した点に特徴がある。そして、症状固定以後の回復を認定する根拠としては、医師のカルテ等の書面が重視されていることが窺われる。また、症状固定後の回復可能性があるにもかかわらず、原告の非協力により原告の症状を再度吟味する機会が失われたことも考慮されている点が特徴的である。
| 裁判例(15)名古屋地判平成19年5月8日(自保ジャーナル第1696号) | |
| 年齢 | 24歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 専門学校生・アルバイト(事故時)。事故後正社員として就労。 |
| 傷害内容 | びまん性軸索損傷等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号、視力障害・視野障害8級、左上肢の機能障害5級6号、左膝関節の機能障害12級7号、長管骨の変形障害12級8号、外貌醜状14級11号(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 90% |
| 概要 | 24歳男性について、事故後障害者枠で正社員として就労していること等を考慮して、90%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、後遺障害等級について、「受傷後の状態、症状の推移及び医師の診断等によれば、本件事故による傷害及び高次脳機能障害の程度は極めて重度であったと認められる」とする一方で、
(1)「その後、リハビリテーションにより、同人の身体機能は相当程度向上し、食事、整容等の日常生活動作について、部分的には一人で行いうる」し、
(2)「高次脳機能障害についても、感情の起伏はほとんどみられず、周囲の状況に応じた適切な会話をすることが可能で、規則正しい生活を送り、収入に相応する働きではないにしても、単純な作業は可能であると認められるから、同人には、常時介護が必要ということはできない。」
(3)「もっとも、同人は、上肢の機能のうち、右手薬指しか有効に機能しないこと、日常生活では、随時原告花子による介助が不可欠であること、動作に時間がかかり、複数の事柄を同時に行うことはできず、新たな事柄を習得するためには、介助者による適切な指導や時間がかかることを考慮すると、同人は、随時介護を要する」ものであるとし、後遺障害等級第2級を認定した。
そして、労働能力喪失率については、
(1)原告が実質的に使用できる指は右手薬指のみであることから、原告は手を使った細かい作業はできないし、
(2)記憶障害により、複数の事柄を同時に処理すること、新しいことを学習することは困難であるから、労働能力喪失率は100%に極めて近いということができるとする。
他方で、原告が(3)会社に「障害者枠で採用され、現在も正社員として就労し、月額12万8000円の給与を得ていること」、
(4)「不自由ながらもパソコンのマウスを操作することもできること」を理由に、
(5)「障害者枠での就労が継続することは確実ではない」ことを考慮したとしても、労働能力喪失率は90%とするのが相当であると判示した。
なお、原告は、「自賠責保険の等級認定は誤りであり、後遺障害等級は第1級に該当すると主張し、その根拠として、前記等級認定は右上肢に関する判断を脱漏している」と主張する。
しかし、裁判所は、「原告の右上肢に関する状況を考慮しても、原告は、一人で通勤し、勤務時間中特段の介助を要せずに生活が可能であるから、常時介護を要するということはでき」ないとして原告の主張を退けた。
b 分析
本裁判例は、自賠責と同様に併合2級(喪失率100%相当)を認定しながらも、その後独自に喪失率を検討し、自賠責の等級認定を下回る90%を認定した点に特徴がある。通常よりも低い喪失率を認定したのは、単純作業が可能であることや、現に正社員として就労していることを重視したためであろう。障害者枠での就労継続が不確実であることを考慮しつつもそのような判断をしている点は参考になろう。
オ 自賠責認定7級の事案
| 裁判例(16)名古屋地判平成13年5月25日(自保ジャーナル第1429号) | |
| 年齢 | 31歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 学歴 | 不明 |
| 職業 | 消防士(事故時)。事故後復職し配転を受けて稼働。 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、くも膜下出血等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号 |
| 比較基準喪失率 | 56% |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例認定喪失率 | 症状固定時33歳から60歳までは40%、60歳から67歳までは56% |
| 概要 | 31歳男性について、事故後復職し配転勤務している事情があるが、事故時の収入が少なくとも定年まで維持されて減収がないとまではいえないこと等を考慮して、労働能力喪失率については上記のとおり認定した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、自賠責の認定した7級4号に相当する56%の喪失率を主張していた。
他方、被告は、原告の収入について、事故前年も、事故から2年後の復職時点においても給与所得はほとんど変わらず、また、事故から5年後の訴訟時点においても、事故前と同一の勤務先(消防局)で就労し、事故前とほとんど変わらない給与所得を得ている点を指摘した上で、管理職への昇格の可能性の喪失等の事情を考慮したとしても、喪失率は30%以下とされるべきであると主張していた。
裁判所は、まず、
(1)原告が事故から約1年10ヶ月後に復職し、配転を受けて4年以上稼働していること、
(2)復職後、事故前の97%の年収を維持していることを認定した。
他方で、(3)事故後は昇級昇格のペースが落ちていること、
(4)事故後の昇級の状況に照らすと将来は管理職となる可能性も相当程度あったものと認められるが、後遺障害により管理職への登用は困難と認められること、
(5)後遺障害により業務力が劣る可能性があること、自覚症状として情緒不安定、感情失禁があり、医師等の見解でも独自での判断で行う作業や素早い行動などは困難で制限があり労務遂行の巧緻性や持続力において平均人より著しく劣る状態、あるいは事務系の比較的軽易な仕事しか遂行し得ない状態にあること等を考えるとき、原告が地方公務員の職にあるからといって安易に後遺障害によって退職となる可能性がないと断言することはできないことを認定し、事故時の収入が少なくとも定年まで維持されて減収がないとまではいえないと判示した。
裁判所は以上の事情を総合考慮し、60歳までは事故前年である平成6年の年収631万0800円を基礎として40%の喪失率を認め、60歳から67歳までは、復職後の平成9年度の賃金センサス産業計企業規模計男子労働者学歴計61歳の平均年収464万1900円を基礎として56%の喪失率を認めた。
b 分析
本裁判例は、消防局職員の定年60歳までの喪失率について、7級相当の56%ではなくこれより低い40%と認定している点が特徴的である。
この点、本裁判例は、将来の昇級昇格が困難となる可能性や中途退職の可能性があるとはいえ、復職し、しかも、復職後に事故前とほぼ同額の年収を維持しているという点を重要視して上記判断を導いたものといえよう。
カ 自賠責認定9級の事案
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裁判例(17)名古屋地判平成16年10月6日 (交通民集37巻5号1354頁) |
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| 年齢 | 21歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 住宅用外壁板の検査作業(事故時)。事故後同じ職場に復帰。 |
| 傷害内容 | 頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 比較基準喪失率 | 35% |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例認定喪失率 | 27% |
| 概要 | 21歳男性について、判断力や集中力、記銘力等の低下が見られるが、事故前と同じ仕事をこなし、減収も生じていないことを理由に、10級相当の27%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、事故前の同じ職場に復帰している点について、そうは言っても、
(1)判断力や集中力の低下、複数の作業を並行処理する能力の障害及び記銘力の低下等に悩まされていること、
(2)従前と同水準の労務に服しているとはいえないこと、
(3)現在の労務をこなすのに特段の努力を必要としている状態であること、
(4)そのような状態は事故後4年間を経過しても改善の傾向は見られず、むしろ悪化しているから高次脳機能障害による判断力、集中力及び記銘力等の低下といった症状は一生涯継続し、将来の昇進にも悪影響を及ぼすこと
等を考慮すれば、喪失率は9級10号を基準に35%とするのが相当であると主張していた。
他方、被告は、本件事故後の治療ないし回復状況及びその後の就労ないし収入状況などに鑑みれば、喪失率が20%を上回ることはないと主張していた。
裁判所は、
(1)原告の仕事上の作業能率が悪くなったり、ミスが増えたりしたこと、
(2)事故前と比べて減収がないのは原告の努力と会社の一定の配慮による面があること、
(3)現在の勤務体制での勤務を継続することは困難であり、勤務体制の変更等により将来の減収は否定できないこと、
(4)症状固定から4年近くが経過した時点でも原告の症状は継続しており、その症状が一定期間で改善すると認めるに足りる証拠はないことを、喪失率減少の事情として挙げ、
他方で、(5)原告は比較的早期に元の職場に復帰し、ミスが増えたとしても従前の仕事をこなしていること、
(6)原告の努力等による面があるとしても減収していないこと
を併せ考慮し、喪失率を27%と認定した。
b 分析
本裁判例は、自賠責等級が9級10号(喪失率35%相当)であるにもかかわらず、これより低い27%の喪失率を認定している点に特徴がある。
より低い喪失率が認定された理由については、原告が
(1)事故の1ヶ月後に事故前と同じ職場に復帰したこと、
(2)事故前と同じ業務に従事していること、
(3)給与収入や賞与が事故前と比較して事故後に増加し減少していないこと
が結論に大きく影響を及ぼしたものと思われる。
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裁判例(18)東京地判平成15年2月24日 (自保ジャーナル第1496号) |
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| 年齢 | 11歳(事故時) |
| 性別 | 女子 |
| 職業 | 事故時:小学生、訴訟時:高校生 |
| 傷害内容 | びまん性軸索損傷等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 比較基準喪失率 | 35% |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例認定喪失率 | 20% |
| 概要 | 11歳女性について、症状の経過が良好であること、就労前(訴訟時点で高校在学中)であり現実に労働能力の制限や減収の発生が明白であるとは言い難いこと等を理由に、11級相当の20%を認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、
(1)脳挫傷の程度は、昏睡の期間と外傷後健忘の期間が長く重症であり、CT像上も広範な脳挫傷像を示し、脳挫傷に伴う身体的筋力低下がある上、強度の頭痛発作に悩まされていること、
(2)てんかん発症のリスクファクターは極めて高いこと、
(3)認知障害、情緒、行動、心理、社会的障害が顕著であること、
(4)原告は、高次脳機能障害下にあり社会適応は極めて困難な状況にあること、
(5)右頭損傷による後遺障害は不可逆的な損傷であり、改善は期待不可能で生涯継続すること
などを主張して、9級相当の35%を主張していた。
他方、被告は、
(1)運動機能に障害は認められず、外傷性てんかんに移行する可能性は低いこと、
(2)知能指数も正常の範囲内の数値であること、
(3)小児頭部外傷は重傷の機能障害もしばしば回復をみせるという特徴を有しており、原告もその例にあたること、
(4)原告の予後は極めて良好であること
などを主張して、労働能力に制限があるとは考えられないと主張した(喪失率ゼロを主張していたものと思われる)。
裁判所は、喪失率を減少させる事情として、
(1)経過は良好で、脳波に異常はなく、外傷性てんかんに移行する可能性も低いこと、
(2)事故後約4年を経過した時点で県立高校に通学し、頭痛薬を服用する程度で通院もしておらず、ほぼ通常人と同様の日常生活を送っていることが認められること、
(3)原告は就労前であるため、現実に労働能力に制限があることや収入の減少が生じることが明白であるとは言い難いこと、といった事情を挙げる一方で、喪失率を増加させる事情として、
(4)びまん性軸索損傷等の障害を負い、事故後約1週間は覚醒せず、その後約3週間は刺激すると覚醒するという状態であったこと、
(5)画像上脳梁損傷が認められること、
(6)集中力がなく記憶の保持に障害があること、
(7)事故後6年以上経過しても知能指数に特段の変化がないこと
を挙げ、結論としては喪失率を20%とするのが相当であると判示した。
なお、裁判所は、以下のような医師の詳細な意見を考慮した上で、原告の症状の経過が良好であると認定している。
すなわち、医師は、
(1)症状固定から約1年5ヶ月経過した時点で脳波に異常が見られなかった、
(2)症状固定から約3年後の時点では脳梁に外傷性変化が残っているものの、これが頭痛の原因になっているとは証明し難い、
(3)脳波に異常はなく、定期的な脳波検査は不要と判断された、
(4)以後外傷性てんかんに移行する可能性は低い、
といった意見を述べており、本裁判例ではこの点が考慮した上で、経過が良好であるとの認定をしている。
b 分析
本裁判例は、自賠責で認定された9級であれば喪失率は35%相当になるケースが多いにもかかわらず、20%と認定している点に特徴がある。原告の症状の経過が良好であることが、そのような認定に大きな影響を及ぼしたものと思われる。
また、本裁判例において、原告の症状の経過が良好であるとの認定が、医師の詳細な意見によって裏付けられている点は参考となろう。
ア 今回調査した範囲では、自賠責認定1級ないし3級の事案は、上記(3)(1)(2)(3)で紹介した裁判例を除き、100%の喪失率が認められていた。かかる事案における裁判上の主要な争点は、労働能力喪失率ではなく、介護費用の点にあると思われる(介護費用については次章を参照されたい)。
以下、5級以下の裁判例を紹介する。
イ 自賠責認定5級の事案
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裁判例(19)東京地判平成16年9月22日 (自保ジャーナル第1562号) |
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| 年齢 | 16歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 高校生 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、びまん性軸索損傷、右同名半盲、右動眼神経麻痺 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号、右同名半盲13級2号、複視12級(併合4級) |
| 比較基準.喪失率 | 92% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 92% |
| 概要 | 16歳男子高校生がびまん性脳損傷等を負い、自賠責では高次脳機能障害5級他併合4級後遺障害を残した事案につき、事故後大学へ進学したが、高校教師の配慮とリハビリ目的の特別入学であること等から労働能力喪失率を92%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、原告が就労することは到底不可能であるから、労働能力喪失率は本来100%であるが、自賠責保険の後遺障害等級認定に従い92%を主張した。
他方、被告は、
(1)事故後、原告が大学に進学していること
(2)原告の様子をビデオ撮影したところ、ギター・ピアノ演奏のほかパンクの修理までしていたことから、労務内容の制限は受けるが一般就労を維持する能力は認められること
(3)国の支援プログラムや通所施設での訓練を通じて、広い職種の選択が可能となること
を指摘して、原告の高次脳機能障害は9級(労働能力喪失率35%)程度が相当であると主張した。
裁判所は、
(1)リハビリの結果、携帯電話でメールを送ることができたり、ギターを弾いたり、近所で買い物ができるなど事故後の症状の改善がある程度認められ、ある程度の認知・判断能力及び新しいことの学習能力を備えているということができるが、現在においてもなお、初めての場所では道に迷う、ストーブの火をつけたまま忘れてしまうなどの物忘れ症状があるため、認知障害・記銘力障害が相当程度改善されたとはいえないこと
(2)事故後大学へ進学しているが、これは原告自らの力で授業の内容を理解し、他の学生と同様に課題や試験をこなして得られた結果・成績ではないため、これによって原告が学力・能力を有しているとの認定はできず、むしろ、授業についていけないため、現在は大学にいかなくなっていること
(3)父親の店の手伝いが長続きしておらず、通常通りの労働が期待できるとは言い難いこと
(4)暴力行為に至ることはなく、また、家族以外の他人に向けられることは少ないとしても、易怒性・易興奮性が認められ、コミュニケーション等対人関係を正常に築くことには困難があること
から、「原告の症状、特に高次脳機能障害については、症状固定時より改善している部分があるものの、なお障害を残しており、労働能力への影響が大きく減ぜられたとまでは評価できない。」とし、原告の現状は、単純繰り返し作業などに限定すれば一般就労も可能だが、新しい作業を学習できなかったり、環境が変ると作業を継続できなくなるなどの問題があるため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないものというべきとして、高次脳機能障害は第5級2号(併合4級)が相当とし、喪失率は92%と判示した。
b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害は9級10号(「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」)に相当するという被告の主張を退け、自賠責どおり5級2号を認定している点に特徴がある。
裁判所は、作業能力(認知障害・記銘力障害の程度)と対人関係形成能力の両側面を検討したうえで、「(原告の)就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができない」と認定し、高次脳機能障害は5級2号が相当と判断している。
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裁判例(20)大阪地判平成14年10月21日 (自保ジャーナル第1500号) |
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| 年齢 | 27歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 同族会社役員 |
| 傷害内容 | 頚部捻挫、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血、脳梁部脳挫傷 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 79% |
| 概要 | 27歳男子父親経営会社の取締役が自賠責認定高次脳機能障害5級2号の後遺障害を残した事案につき、5級2号の後遺障害が残存したと認め、労働能力喪失率は79%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、
(1)強い記銘力障害・計算障害等の後遺障害が残存していること
(2)症状固定後今日に至るまで、何度も職場復帰を試みたものの、いずれも奏功せず、今日でもなお無職であること
(3)記憶障害の改善が最早望めないことから、原告が終身労務に服することができないとし、後遺障害の程度は3級に相当すると主張した。
他方、被告は原告の3級に相当するとの主張を否認した。
裁判所は、
(1)WAIS?R検査では特に知能指数の低下は認められなかったが、個々の検査内容では、算数問題、復唱問題、符号問題で明らかな低下が示されているほか、ベントン視覚記銘検査でも欠陥ありと評価されており、三宅式対語記銘力検査でも記銘力障害有と判断されていること
(2)症状固定後も、やかんで湯を沸かしていることを忘れ空焚きしてしまったり、子供のミルクを作る際に5杯目を越えると何杯目かを数えられないこと
(3)復職を試みた際、電話を架けている途中で他のことに気をとられると、自分が電話を架けていることを忘れてしまったり、指示された作業内容を覚えておらず、作業内容を記載したメモを渡されてもそのこと自体を忘れてしまう等の症状が残っていること
(4)医師が原告の就労の見込みについて「単純な繰り返し作業に限定すれば、繰り返し行なうことにより作業手順を覚えてそれを行なうことは可能と考えます。ただし、その作業手順に少し変化が生じた場合、混乱が生じ対応できないことになる可能性が強いと考えます。本人は、現在自信喪失しており、職場の理解と我慢強い援助があれば、失敗しながらでも作業を続けることにより少しずつ作業範囲の拡大が得られるものと思います。記憶障害が原告の障害の中心ですが、記憶障害も作業療法等のリハビリテーションで改善します。就業をある意味でのリハビリテーションと考えれば、本人が今後の社会生活を続けていくためにも、積極的に取り組むべきです。」と判断していること
から、「原告は、脳外傷による高次脳機能障害により、単純繰り返し作業などに限定すれば就労も可能だが、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなったりするなどの問題があるため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができない。」とし、後遺障害等級5級2号の後遺障害が残存したとして、原告の労働能力喪失率は79%と判示した。また、原告は単純繰り返し作業に限定すれば就労の見込みがあると認められるので、今後いかなる職業にも全く就労が不能であると認めることはできず、現時点で復職できていないことをもって労働能力が100%失われたとはいえないとした。
b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害は3級3号(「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、介助なしでも日常の動作を行なえる。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」)に相当し、全く労務に服することはできないとする原告の主張を退け、自賠責等級認定どおり5級2号に該当するとして、79%の労働能力喪失率を認定した点に特徴がある。裁判所が認定した後遺障害等級は概ね医師の判断に沿ったものとなっている点に留意されたい。
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裁判例(21)横浜地判平成19年3月29日 (自保ジャーナル第1696号) |
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| 年齢 | 19歳(事故時) |
| 性別 | 女子 |
| 職業 | 大学生 |
| 傷害内容 | 頭部外傷、骨盤骨折、全身打撲 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例認定喪失率 | 79% |
| 概要 | 19歳女子大学生が自賠責認定高次脳機能障害5級2号後遺障害を残した事案につき、労働能力喪失率は79%と認定した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、自賠責認定どおりの79%の労働能力喪失を主張し、被告は、これを争った。
裁判所は、原告の心理社会学的障害(行動障害)について
(1)集中力が持続せず、通学先の大学において授業を受ける際もいらいらし、検査も途中でやめてしまうなど注意障害が認められること
(2)視覚・聴覚いずれの刺激の記憶も低下しており、記憶力には制限が認められるなど記憶障害が認められること
(3)計画を適切に立てることができないため他者による事前の周到な準備を要し、衝動的に行動することがあるため計画的な買い物ができないなど遂行機能障害が認められること
(4)ささいな言葉や態度に敏感でストレス耐性が低く、事態に適切に対処できないと脱抑制・易怒性が出現し攻撃的な程度をとり、自身の感情をコントロールできず、対人面においてトラブルを起こしやすいなど対人技能に劣っていること
(5)いったん思い込むとその内容を修正することが困難であるなど固執傾向が認められること
(6)反応に時間がかかるなど情報処理速度が低下していること
から、生活に介助を要する状況が終身続くものと見込まれるとし、労働能力喪失率は79%と判示した。
b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害について具体的な等級に言及することなく喪失率を認定している。他の裁判例で労働能力喪失率を認定する際に検討されることが多い事故後の就労の事実や就労可能性につき、一切言及することなく「原告の後遺障害の内容、程度からすると、労働能力喪失率は79%」と判示していのは、未就労の学生が被害者の事案であるためであろう。
また、高次脳機能障害の程度を判断するにあたり、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、対人技能拙劣、固執傾向、情報処理速度低下の6要素を取り出し、各要素に分類して事実を指摘している点が特徴的である。
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裁判例(22)前橋地裁高崎支部判平成18年9月15日 (自保ジャーナル第1686号) |
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| 年齢 | 17歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 高校生 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、肺挫傷、左上腕骨折、左下腿骨折 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 79% |
| 概要 | 17歳男子高校生が自賠責認定高次脳機能障害5級2号後遺障害を残した事案につき、5級2号の後遺障害が残存したと認め、労働能力喪失率は79%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、
(1)知能の大きな低下はみられないが記憶障害・記銘力障害は極めて重篤であること(2)本件後遺障害は単純繰り返し作業に限定すれば原告に一般就労を可能とさせる程度のものであるが、新しい作業の学習ができなかったり、環境が変わると作業が継続できなくなったりすることから、原告の作業能力は一般人に比べて著しく制限され、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないとし、この障害は5級2号所定の「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に該当すると主張していた。
他方、被告は、
(1)原告が本件事故後に大きな回復をみせ、自転車通学や単独での外出が可能となり、高校を卒業して専門学校に入学していること
(2)診療録や各種検査記録から記銘力障害に回復が認められること
(3)医師が「単純繰り返し作業や簡単な応用動作は自立できると思われること、及び、作業の手順が悪く、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業は行なうことはできないが一般就労を維持できる」と就労能力の改善を裏付ける診断をしていること
(4)性格変化もそれに伴う不穏な言動もなく、日常生活において近親者による介護あるいは介助が必要な場面は一切認められないことから、本件後遺障害は7級相当程度であり、労働能力喪失率は56%程度と主張していた。
裁判所は、
(1)性格変化として自発性・活動性の低下が見られるが、感情易変、不機嫌、攻撃性(易怒性)、暴言・暴力、病的嫉妬・ねたみ、被害妄想などはないことから、原告が家庭内で問題になる軋轢を生じさせることはなく、一定の社会参加が可能であること
(2)記銘力が著しく低下し、これに関連した遂行機能障害が認められるため、単純繰り返し作業などに限定すれば一般就労も可能であるが、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなったりするといった問題があること
から、原告の作業能力は一般人に比べて著しく制限され、就労の維持には職場の理解と援助をかかすことができないと判示して、本件後遺障害は5級2号所定の「神経系統の機能又は精神に著しい傷害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に該当し、これによる労働能力喪失率は79%であると認めるのが相当とした。
b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害について、総論的に次の記載を行なっている点が特徴的である。
「高次脳機能は、知識に基づいて行動を計画し実行する精神活動であり、高次脳機能障害は、頭部外傷後に生じる記憶障害や人格変化を主徴とする障害である。高次脳機能障害の典型的な症状は、全般的な認知障害と人格変化(人格変化のことを行動障害ともいう)であり、認知障害として、記憶・記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害、判断力低下、病識欠落、具体的には、新しいことを学習できない、複数の仕事を並行して処理できない、行動を計画し実行することができない、周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、危険を予測・察知できないなどがあり、人格変化(行動障害)として、感情易変、不機嫌、攻撃性(易怒性)、暴言・暴力、幼稚、羞恥心の低下、多弁(饒舌)、自発性・活動性の低下、病的嫉妬・ねたみ、被害妄想などがある。そして、このような高次脳機能障害を持つ患者は、生活を管理できない、対人関係を維持できない、社会参加ができない、障害を自分で自覚できないなどが問題として指摘される。
高次脳機能障害は、広範囲の脳損傷あるいはびまん性の脳損傷が原因である場合が多く、高次脳機能障害の患者は、就学や就労ができず、家庭での時間を無為に過ごすことになり、家族ともども社会的に孤立しがちになり、また、家庭内での軋轢が高じて本人だけでなく家族への負担も大きくなる。そして、脳外傷による高次脳機能障害の診断には、
(1)頭部外傷急性期の意識障害の程度・期間、
(2)家族、介護者が気づく日常生活状況、
(3)急性期から慢性期を通じての脳画像所見、
特に脳室拡大の3つの視点が欠かせず、これを補足するものとして、神経心理学的検査や、同僚、上司、教師などの観察、小脳失調、痙性片麻痺などの神経所見がある。
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裁判例(23)名古屋地判平成17年6月3日 (自保ジャーナル第1629号) |
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| 年齢 | 17歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 高校生 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、右大腿転子間骨折、骨盤骨折、肺挫傷 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 79% |
| 概要 | 17歳男子高校生が自賠責認定高次脳機能障害5級2号後遺障害を残し、復学・大学に入学した事案につき、脳室拡大等の所見があり、アルバイト先の理解で継続している等就労は「受診と職場の理解と援助が欠かせない」等から、労働能力喪失率は79%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、5級2号に該当する高次脳機能障害によって労働能力の79%を喪失したと主張していた。
他方、被告は、
(1)事故後、原告が平均人と同様に大学生活を送ったり、アルバイト(ケンタッキーフライドチキンの厨房)として稼動できるまでに回復していること
(2)仮に、原告が仕事を行なううえで何らかの支障が生じるとしても、一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるにすぎないこと
から、原告の後遺障害は「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することのできる労務が相当程度に制限されるもの」として9級10号に該当すると考えるのが相当であり、労働能力の制限も35%を越えるものではないと主張していた。
裁判所は、
(1)事故後にケンタッキーフライドチキンのアルバイトに復帰して土日に1日5時間程度、時給750円位でアルバイトを続けているが、総合的には他の従業員と比べ労働能力が劣っており、新しい仕事を覚えることができないなど作業条件が制限されているため部分的な仕事しかできないこと
(2)リハビリセンター病院からの回答によると、将来における就労は可能であると考えられるが、原告には対人技能拙劣、感情コントロールの低下、退行、固執性、引き籠もりなどの認知障害及び人格変化の症状があるため、職種の選択、職場における環境設定、投薬治療の必要性など、現状と変らない周囲のサポートが必要であり、多くの誓約や制限が発生するものと推測されるとされていること
から、「原告は、本件事故により高次脳機能障害の後遺症が残り、将来就労が期待できるが、その内容は、単純な繰り返し作業に限定される可能性が高く、新しい作業を学習することや職場を変わるときに困難が伴うことが予想され、このために、一般人と比較して作業の能率が著しく制限され、原告が就労を維持するためには、医療機関の受診と、職場の理解と援助を欠かせないものと認められる。」と判示し、このような状況からすれば、原告の後遺障害は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することはできないもの」として後遺障害等級5級2号に該当し、原告の労働能力喪失率は79%と判示した。
b 分析
本裁判例は、リハビリセンター病院からの調査嘱託に対する回答書とアルバイト先の調査嘱託に対する回答等をもとに、原告の労働能力喪失率を実質的に判断したうえで、被告の労働能力喪失率は35%に過ぎないという主張を退け、79%の喪失率を認めた点に特徴がある。
ウ 自賠責認定7級の事案
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裁判例(24)名古屋地判平成17年2月9日 (自保ジャーナル第1603号) |
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| 年齢 | 27歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 会社員(事故時)。事故後配置転換されるも復職。 |
| 傷害内容 | 脳挫傷、びまん性軸索損傷等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号(併合6級) |
| 比較基準喪失率 | 67% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 67% |
| 概要 | 27歳男子について、復職してはいるが、自賠責の認定と同じく7級4号(併合6級)を認定し、喪失率も6級相当の67%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、
(1)事故により意識不明となり救急病院に搬送された時点では意識レベルが極めて低く、事故から約10日後に意識レベルが改善された、
(2)脳挫傷、外傷性くも膜下出血等と診断された、
(3)MRI検査において、
a脳梁後半部の萎縮と同部内の結節性信号異常域(陳旧性軟化巣を示唆する)が認められる、
b周囲の脳質周囲深部白質の軽度萎縮も認められる、
cびまん性軸索損傷後性変化が示唆される像である、
d小脳上半分皮質と上小脳脚の萎縮を認める、
e脳梁後半部、小脳上半分皮質と上脳脚萎縮及び脳梁後半部内陳旧性軟化巣;びまん性軸索損傷後性変化が示唆される、
と診断されている、
(4)画像診断において、脳梁後半部に特徴的な行為の抑制障害(脳梁性失行)は認められないが、本人の訴えでも、注意力障害、殊に分配的注意の障害を認め、2つ以上のことを同時に行う上で困難がある、
(5)全般的なびまん性軸索損傷に伴う変化として、記銘力障害、言語性記憶障害(意味記憶の障害、見当識障害、短期記銘力障害)が認められる、
(6)原告の勤務する会社の社長が原告の後遺障害により仕事に支障が出ていること
を具体的に述べており、それらの事情は前記の検査結果等にも整合する、とし自賠責認定と同等の喪失率を認定した。
原告の勤務する会社の社長は、原告の後遺障害による仕事の支障について以下のような書面を作成した。
すなわち、
「(1)電話を受け、内容をメモしておきながら、他の作業をすると電話を受けたことを忘れる、
(2)撮影手配書の内容についての質問に対し説明しても、当日一つか二つ忘れる、
(3)販売関係の書類の記入見本と記入方法を説明しても、再度質問したり、通常人が5分で記入するのに20分も時間がかかる、
(4)売上日報に注文か掛売りかを確認して記入しなければならないのに、確認を忘れて全て注文と記載したり、写真の発送先を間違えたりする、
(5)写真発送の際、振替用紙を入れ間違えたり、クーポン券の発送の際、伝票を入れ間違えたり、基本的に仕事の流れが理解できていない、
(6)仕事の段取りを忘れ、アルバイトによく説明できない、
(7)電話の受けた内容の説明を受けても正確に伝わらず、再度電話を入れることが多い、
(8)平成14年6月から新しい職場に変わったが、そこでも同僚の理解、協力、支援が必要となる。」
といった内容の書面であった。
なお、原告は、てんかんの症状があることから労働能力がさらに制限される旨主張していた。
これに対し、裁判所は、
(1)事故から約5年経過後にはてんかんの症状が出現しておらず、
(2)現在は抗てんかん薬の投与を受け、少なくとも2年間は投薬を続け、その間発作がないことを確認し、徐々に減量の予定とされていること
から、原告の労働能力が67歳を超えて制限されていると認めることは困難であり、原告がてんかん治療を受けていることは後遺障害慰謝料算定の事由とするのが相当であると判示した。
b 分析
本裁判例は、復職しているにもかかわらず、認定等級相当の喪失率よりも低い喪失率が認定されなかった点が特徴的である。
このように等級相当の喪失率が認定されたのは、原告の勤務先の社長が原告の稼働状況を具体的に説明した点が大きく影響したものと思われる。
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裁判例(25)東京地判平成15年8月26日 (自保ジャーナル第1520号) |
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| 年齢 | 31歳(事故時) |
| 性別 | 女子 |
| 職業 | 有職主婦 |
| 傷害内容 | 急性硬膜下血腫、脳挫傷 |
| 自賠責等級 |
高次脳機能障害7級4号、外貌醜状7級12号(併合5級)。 なお、事故から約2年8ヶ月後に一旦、医証に基づき急性硬膜下血腫や脳挫傷に起因するてんかん発作やうつ状態につき9級10号の自賠責認定をうけたが、さらにその2年8ヶ月後の時点では、以前必ずしも判然としなかった人格変化やけいれん発作の症状が残存しているとして、7級4号(併合5級)の自賠責認定を受けた。 |
| 比較基準喪失率 | 56%(7級) |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 56% |
| 概要 | 31歳女性について、7級相当の56%を認定した。(なお、外貌醜状については労働能力への直接の影響を否定し、後遺障害慰謝料で考慮した。 |
a 上記認定に至った理由
本事例の特徴は、自賠責において一旦高次脳機能障害について9級10号の認定がなされたが、異議申立の結果、7級4号の認定がなされたという点にある。
この点、裁判所は、まず以下の(1)ないし(3)のとおりの自賠責の認定を確認した。
すなわち、
(1)平成11年8月2日(事故から約2年8ヶ月後)、A医師作成の後遺障害診断書などの医証に基づいて、急性硬膜下血腫や脳挫傷に起因するてんかん発作やうつ状態につき9級10号と認定したこと、
(2)新たに提出された画像検査資料などの医証によれば、平成11年当時と比較して明らかに症状が増悪したと評価することは困難であるものの、B医師作成の後遺障害診断書などの医証により、平成11年当時は必ずしも判然としなかった脳外傷による高次脳機能障害が残遺していることが明らかになったことから、平成14年4月4日(以前の認定判断から約2年8ヶ月後)を症状固定日として取り扱うことが妥当と判断したこと、
(3)脳外傷による高次脳機能障害の典型的な症状である人格変化が残存していること、神経症状としてけいれん発作の症状も残存していること
なども勘案し、7級4号に該当するものと判断したこと、を確認した。
その上で、裁判所は、それ以上に特段の理由を付することなく7級4号に該当するものと判示し、7級相当の56%を認定した。
b 分析
本裁判例は、自賠責において一旦9級10号に認定された後に7級4号に認定された点について、各認定の根拠となった医証を比較検討して、当初は必ずしも判然としなかった脳外傷による高次脳機能障害が残存していることを認定し、後の自賠責の7級4号の認定を相当とした。
本裁判例が、自賠責の認定が異なったことの合理性を、詳細に医証を検討して判断している点は、他の同種事例を検討する際に参考となろう。
エ 自賠責認定9級の事案
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裁判例(26)東京地判平成17年12月21日 (自保ジャーナル第1637号) |
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| 年齢 | 44歳(事故時) |
| 性別 | 女子 |
| 職業 | パート主婦 |
| 傷害内容 | 左側頭骨骨折、頭蓋底骨折、急性硬膜下血腫、気脳症、左顔面神経麻痺、外傷性両感音性難聴等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号、外貌醜状12級14号、言語障害10級2号、眼瞼障害12級2号、聴力障害14級(併合8級)。 |
| 比較基準喪失率 | 35%(9級) |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 35% |
| 概要 | 44歳女子について、高次脳機能障害に関し、人格変化が明確でないこと、脳実質を損傷したことを認めるに足りる証拠がないことを考慮して9級10号(併合8級)を認定し、9級相当の35%を認定した。なお、高次脳機能障害以外の後遺障害については労働能力に直接は影響しないとし後遺障害慰謝料で考慮した。 |
a 上記認定に至った理由
原告は、「神経系統の機能又は精神の障害については、本件事故の前とは異なり、記憶障害、構成障害、語想起障害等の認知障害と、感情易変、不機嫌、攻撃性、暴力、自発性・活動性の低下等の人格変化が生じて」いること等を理由に7級4号、併合5級(喪失率79%)を主張した。
裁判所は、
(1)「原告は、頭部外傷を受けた後に神経及び神経症様症状が発現し、その症状が残存していることは認められるが、医学的に知能低下や明らかな人格変化については証明されているものとは認め難いと判断される」、
(2)「頭部外傷で人格変化等の精神障害を来す場合は、脳実質に明らかな損傷があり、画像では脳の萎縮、脳室拡大等の変化を呈することが脳損傷のたどる典型的な経過とみられることから、提出の画像について検討した結果、左側頭骨骨折、頭蓋底骨折及び頭蓋内の出血、すなわち、硬膜外血腫が認められ、受傷時に2日間のJCS20(刺激すると開眼)の意識障害があったことから、相当強い外力が頭部に加わったことは認められるが、経時的に撮影された頭部画像についての検討では、脳萎縮、脳室拡大等の変化はなく、脳実質を損傷したとする明らかな所見はみられなかった」、とし、
(3)「そうすると、頭部外傷後に原告に残存している症状は、めまい、受傷部のしびれ等の神経症状のほかは、...(そのほかの後遺障害)...に随伴するとみられる外傷性神経症として評価することが妥当なものと認められ、少なくとも受傷時の意識障害の程度、頭部画像、症状所見等から高次脳機能障害のような明らかな脳の器質性障害とは認められないものと判断される」
とし、原告の前記主張を退け、9級10号を認定した。
なお、上記認定の根拠として以下のような内容の医証が挙げられている。すなわち、
(1)自覚症状は「めまい、しびれ(顔面と思われる)」とされ、「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」では、精神障害、性格障害について特に異常とされる所見はみられない、
(2)高次機能検査の結果、明らかな知能低下はないと思われますが、軽度の左側頭葉障害も否定できない(事故前との比較ができないため正確な評価はできないが)、また、精神科によれば、軽度の過敏衰弱徴候があるが、これが後遺症として還元できるかは不明であり明らかに頭部外傷による障害と確定はできないが、疑わしいという状態である、
(3)記憶・構成・語想起の障害」との病名で同年6月時点で障害が存在するが、その時点では明らかな痴呆とはいえない、この症状が平成12年7月に受傷した頭部外傷と関連するかどうか断定はできないが可能性は否定できない、
等の医証が挙げられている。
b 分析
本裁判例においては、原告の主張に対して、人格変化が明確でないこと、脳実質を損傷したことを認めるに足りる証拠がないことを理由にこれを排斥している点が特徴的である。この判断は、前記医証を詳細に検討した上で導かれている点が重要である。
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裁判例(27)京都地判平成16年3月10日 (自保ジャーナル第1572号) |
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| 年齢 | 28歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 無職。司法試験浪人生 |
| 傷害内容 | びまん性脳損傷等 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 比較基準喪失率 | 35% |
| 本判例等級 | 同上 |
| 本判例認定喪失率 | 35% |
| 概要 | 28歳男子について、びまん性脳損傷に起因して、記銘力が若干低下し、1回の刺激で記憶できる量がいくぶん減少したこと、画像所見上も軽度の脳萎縮が窺われることを考慮して、自賠責と同様に9級10号と認定し、労働能力喪失率も9級相当の35%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
まず、原告は「常時仕事を指示し、指導してくれる存在がいなければ不可能であって、一般人と同様の労務に服することができない」状態であるから7級4号に該当すると主張した。
これに対し、裁判所は、
(1)「...(事故から1年2ヶ月後、及び約2年後に実施された)...各種記銘力検査や高次脳機能検査の結果において、原告の記銘力等の脳機能が正常範囲にあったこと」、
(2)「原告が...(事故の4ヶ月後)...から一人暮らしをしていたこと」に加え、
(3)「原告は、本人尋問の際、原被告代理人及び裁判所からの質問に対し、概ね、その意味を十分に理解した上、適切な回答をしていた」
ことを考慮して、上記原告の主張を退けた。
次に、被告は、
(1)
a「本件事故による受傷直後に認められた原告の失見当識や記銘力障害はその後快方に向かい、受傷から約1年を経過した時点で施行された高次機能検査の結果はほぼ正常範囲にまで改善し、集中力の低下、学習能力の低下、記憶力の低下等の原告の訴えは自覚的なものと捉えられること」、
b「慢性期における頭部CT検査、MRI検査及び脳波検査等においても異常が認められなかったこと」などの事情に照らすと、「本件事故により原告が受傷したびまん性脳損傷の程度は中程度のものであって、一般の就業や日常生活に大きな支障を来すような重篤なものではなかった」こと、
(2)「原告の現在の主訴である「躁うつ状態」には、司法試験を目指す不安定で不規則な受験生活、アルコールの過度の摂取、被害妄想に起因する心的不安感、情緒不安定など、非器質性の要因が関与しているとみられ、リハビリ、生活改善、職業訓練等を通じて、今後の労働能力の向上改善が大いに期待できるものである」こと
を挙げて、原告に残存した後遺障害は12級程度に該当するに過ぎないと主張した。
これに対し、裁判所は「原告に画像所見上軽度の脳萎縮が窺われること」を理由にこの主張を退けた。
そして、裁判所は、
(1)本件事故によるびまん性脳損傷に起因して、記銘力が若干低下し、1回の刺激で記憶できる量がいくぶん減少したこと、
(2)画像所見上も軽度の脳萎縮が窺われることといった事情に照らし、9級10号に該当すると判示した。
b 分析
本裁判例は、7級及び12級に該当しない理由を詳細に挙げている点が特徴的である。
特に、
(1)記銘力等の脳機能が正常範囲にあったとしても、画像所見上軽度の脳萎縮が窺われる場合には12級に該当しないと判断されている点、
(2)1人暮らしをしていた事実や本人尋問で適切に応答できていた事実
が、7級に該当しない理由として挙げられている点が参考となる。
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裁判例(28)横浜地判平成15年7月31日 (自保ジャーナル第1520号) |
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| 年齢 | 29歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 会社員(現場監督) |
| 傷害内容 | 脳挫傷、びまん性脳損傷 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害等級不明、複視12級 |
| 比較基準喪失率 | なし |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号、複視12級(併合4級) |
| 本判例認定喪失率 | 92% |
| 判旨 | 29歳男子が乗用車横に佇立中、乗用車に追突され、びまん性脳損傷等から知能低下、易怒性や暴力行為など高次脳機能障害に罹患した事案につき、5級2号(併合4級)として労働能力喪失率は92%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、
(1)日常生活において、食事・更衣・入浴・トイレ等の日常生活の動作事態は一応一人でできるものの、ご飯を皿に入れる等見当はずれなことをしたり、状況に応じた衣類の選択ができなかったり、身体を拭かずに服を着てしまったり、トイレに行くのが間に合わず大小便を失禁してしまうことがままあること
(2)電車に乗ることはできるが切符を買うことができないこと
(3)顔見知りの人と意思疎通したり、他人に対して言葉を発することはできるが、電話での応対や来訪者との応対・初対面との人とのコミュニケーションには制限があること
(4)無気力で1日中ボーっとしていることが多く、感情の起伏が激しく、怒りっぽく、話したいときに聞いてもらえないと暴言を吐いたり突っかかってきたりすること
(5)作業速度の遅さや職場での人間関係維持の困難さなどから公的施設での皿洗い作業を解雇となったこと
から、原告の高次脳機能障害の程度は「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し終身労務に服することはできないもの」に相当するので、自賠責後遺障害等級3級3号に該当し、喪失率は100%であると主張した。
他方、被告は、原告の労働能力喪失率は79%であると主張した。
裁判所は、
(1)記銘・記憶力障害、知能低下・易怒性・暴力行為などの感情障害が認められること
(2)解雇されたことを認めるに足りる証拠はなく、仮に高次脳機能障害による作業及び環境への適応困難さを原因として解雇されたのが事実だとしても、その一事をもって「終身労務に服することはできない」と評価することはできないこと
を判示し、高次脳機能障害の程度は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労働以外の労働に服することはできないもの」という自賠責後遺障害等級5級2号(併合4級)に該当するとして、喪失率を92%と判示した。
b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害は3級3号(自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、介助なしでも日常の動作を行なえる。
しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの)に相当し、労働能力喪失率100%とする原告の主張を退け、高次脳機能障害5級2号(併合4級)を認定し92%の喪失率を認めた点に特徴がある。
裁判所は、原告の3級3号に該当するとの主張を排斥するにあたり、原告が3級3号に該当する根拠として自ら提出する医師の意見書にも「神経系統の機能又は精神に著しい傷害を残し、これにより終身労務に服することができない」との意見が記載されていないことに言及して高次脳機能障害は5級2号相当との結論を導いている。
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裁判例(29)名古屋地判平成12年10月18日 (自保ジャーナル第1387号) |
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| 年齢 | 21歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 大学生 |
| 傷害内容 | 脳内血腫、右気胸 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害不明 |
| 比較基準喪失率 | なし |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 本判例認定喪失率 | 79% |
| 判旨 | 21歳男子大学生が追突事故で高次脳機能障害等を発症し、卒業後は民間会社に障害者雇用の契約社員として勤務する事案につき、不充分ながらも社会に適応して稼動しているとみることができ、今後も稼動を継続することのできる可能性が認められるとして、原告の高次脳機能障害が5級2号に該当するものとし、労働能力喪失率は79%と認定した |
a 上記認定に至った理由
原告は、本件事故により生じた記憶障害・思考障害によって状況判断能力を失ったため、原告は社会に適応することができず就労の可能性は閉ざされているとし、高次脳機能障害は後遺障害等級3級3号に該当すると主張した。
他方、被告は、準社員待遇とはいえ就労しており、あるいは就労可能な障害程度であり、これを後遺障害等級3級とは認定できないことは明白であり、後遺障害等級5級2号に止まるものであると主張した。
裁判所は、
(1)原告が身体障害のほか、脳外傷を原因とする脳の機能障害により一般通常人と比較して著しく労働能力、特に社会生活能力が低下したことは明らかであること
(2)階段の昇降、自転車の使用は可能であり、公共交通機関を利用して単独で病院に通院することが可能となっていること、単独で公共交通機関を使用して外出し、知人と待ち合わせをして用事を足し、外食をすることが可能となったこと
(3)民間会社に障害者雇用として1年間の契約社員として勤務を始め、目立った遅刻・欠勤等もなくパソコンの入力作業に従事して25歳で時給1500円程度の給与を得ていること
(4)当初期待された電話対応などの顧客対応は依然としてできず正社員にはなれなかったものの契約の更新がなされて勤務を続けていること
(5)自動車の運転が可能であること
から、「原告は不十分ながら社会に適応して稼動しているとみることができ、今後も稼動を継続することのできる可能性が十分に認められる」とし、後遺障害の程度は神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないものとして、後遺障害等級5級2号に該当し、労働能力喪失率は79%とみるのが相当と判示した。
b 分析
本裁判例は、医師の見解等を根拠に高次脳機能障害は3級3号に相当するので就労の可能性は閉ざされている(喪失率100%)という原告の主張を退け、自賠責等級認定どおりの5級2号に該当するとして、79%の労働能力喪失率を認定した点に特徴がある。
「就労に際してはスタッフが原告の障害を認知し、指導的に働きかけるような福祉的就労の場以外不可能と考える」「社会生活への適応は困難であり、労働能力は極めて低いと思われる」という医師の見解を採用せず、様々な事情を考慮したうえで「原告は不十分ながらも社会に適応して稼動していると見ることができ、今後も稼動を継続することのできる可能性が十分認められる」と判示している点が注目される。
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裁判例(30)大阪地判平成6年4月28日 (交通民集27巻2号534頁) |
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| 年齢 | 43歳(事故時) |
| 性別 | 男子 |
| 職業 | 事故時:タクシー運転手。事故後一般事務等で再就職。 |
| 傷害内容 | 脳挫傷等 |
| 自賠責等級 | 不明 |
| 比較基準喪失率 | なし |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 本判例認定喪失率 | 35% |
| 概要 | 43歳男性について、神経症状が脳損傷等の中枢神経に起因するとして9級10号と認定し、労働能力喪失率も9級相当の35%を認定した。 |
a 上記認定に至った理由
裁判所は、原告の自覚症状(左顔のしびれ感、違和感、右方注視時の複視、緊張時の構音障害、左足不安定、根気、集中力低下、記銘力障害、平衡感覚障害など)について、
(1)医師がその障害の程度を中程度ないし軽度であり、日常生活は可能だがより高次の仕事はできないと診断していること、
(2)それら障害はCTスキャン、MRI検査において、左前頭葉、右側側頭葉の脳裏に脳挫傷の痕跡が認められ、脳波検査でも右脳半球の棘波、徐波が存在するなどの他覚的所見による裏付けがあることを理由に脳挫傷等に起因する症状であると判断し、
(3)後遺障害が脳挫傷に起因するものである以上、今後の改善の見込みは少ない
とし、9級10号、喪失率35%を認定した。
この点、原告は、7級4号に該当すると主張したが、
裁判所は
(1)「前記後遺障害の内容・程度に照らし、...(7級の障害の)...程度に達しているとまでは認め難く」、
(2)「現に(証拠略)によれば、住友製薬株式会社に再就職し、医薬品製造工場における製造、検査、包装、分析研究補助、一般事務等の業務に従事し、相応の収入を得ていることが認められる」
として、原告の当該主張を退けた。
他方、被告側は、原告の後遺障害認定に関する自算会の調査時、同会の顧間医は、
(1)提出された脳波上、特段の所見は認められない、
(2)事故から約2年後のCT上、前回画像(その2ヶ月以上前の画像)を上回る所見は認められないとして、脳損傷による原告の神経症状に対する影響はさほどのものではないとの見解を示していること
などから、原告の症状は客観的には局部に頑固な神経症状を残すものに該当するに過ぎず、同症状が脳損傷等の中枢神経の損傷に起因するものとは認められないと主張した。
これに対し、裁判所は、以下のとおり検討し被告側の当該主張を退けた。
すなわち、「一般に、脳波所見、CT等の所見に関する判断は、医師によっても評価が分れ得る微妙なものがあることは確かであるが、現代医学においては、CT、MRIによる診断にも限界がないわけではなく、その像からは必ずしも脳損傷、神経系統の損傷が明確に読み取れない場合であっても、実際には、脳・神経に機能的障害が存し、現実にかなりの神経症状が生じ得ることも稀ではないことは周知の事実であるところ、本件においては、前記のとおり、本件事故による受傷部位が原告が本件事故により(ママ)脳挫傷等である上、頭部CT、MRI上、左前頭葉、右側頭葉に脳挫傷が、脳波検査でも棘波、徐波がそれぞれ認められるのであり、他方、原告の前記自覚症状は、医学的に脳損傷に起因するものとしては理解が困難なものであること等を認めるに足る証拠はないのであるから、当裁判所としては、一般人の経験判断に照らせば、原告の前記症状は脳損傷等の中枢神経に起因する神経症状であり、本件事故と因果関係を有する高度の蓋然性があるとみるのが相当と判断する。したがって、前記被告らの主張は採用できない。」と判示した。
b 分析
本裁判例は、CTやMRIの画像上、脳損傷、神経系統の損傷が必ずしも明確に読み取れない場合であっても、直ちに自覚症状と脳損傷が無関係であると判断するのではなく、脳挫傷の痕跡や棘波・徐波が認められることを理由に自覚症状が脳損傷に起因すると判断している点が特徴的である。
また、7級4号に該当しない理由として、再就職し相応の収入を得ていることを考慮している点も特徴的である。
上記裁判例をみると、裁判所は労働能力喪失率の認定にあたり、次のような事情を考慮していることがわかる。
すなわち、
(1)就業に関する事情(現在就業しているかどうか、就業し始めた後退職せざるを得なくなった事情があるか、就業意欲の有無・程度、周囲の協力その他の状況によっては就業可能か、現在の就業の様子等)、
(2)改善可能性(医証上の回復傾向、リハビリ状況等)、
(3)コミュニケーション能力に関する事情(人格障害・易怒性・易興奮性の程度、他人との会話が成り立つかどうか、本人尋問で質問に対して的確に応答できるかどうか等)、
(4)生活の自立度(1人暮らしをしているか、金銭のやりくりをできるか、車を運転できるか等)、
(5)本人尋問の不出頭(医証上は回復傾向が窺われ、かつ本人尋問に出頭できない合理的な理由がないという状況で、本人尋問に出頭しないという事情)
等が考慮されている。
以下の表を参考にされたい。
| (1) 就業に関する事情 | |
| 喪失率を増加させる事情 | 喪失率を減少させる事情 |
|
・現在就業していない。 ・就業の意欲がない。 ・一旦就業し始めた後、退職をせざるを得なくなった。 ・職場でのトラブル、ミスが多い。 ・現在就業できているとしても、それは周囲の援助があるからであり、将来就労を継続できる可能性は低い。 ・就業の見込みがたっていない。 ・予想外の状況に対応することができない。 |
・現在就業している。 ・事故前の職場に復帰した。 ・収入が事故前と同様、事故前より増加している。 ・就業の意欲がある。 ・単純な作業に限定すれば就業できる。 ・周囲の協力その他の状況によっては就業が可能である。 ・今後就業していくことが不可能とはいえない。 |
| (2) 改善可能性 | |
| 喪失率を増加させる事情 | 喪失率を減少させる事情 |
|
・医証上、回復傾向がみられない。 ・リハビリの成果は期待できない。(リハビリの意味を理解できない。) |
・医証上、回復傾向がある。 ・リハビリによる回復可能性がある。 ・リハビリの成果が出ている。 ・てんかんは服薬により発作を抑えることができる。 |
| (3) コミュニケーション能力 | |
| 喪失率を増加させる事情 | 喪失率を減少させる事情 |
|
・本人尋問の際、ほとんど的確に応答することができなかった。 ・人格障害、易怒性、易興奮性があり他人とのコミュニケーションに支障が出ている。 ・他人との会話が成り立たない、支障が出ている。 ・社会との接触を拒絶している。 |
・本人尋問の際に、質問に対して的確に応答できた。 |
| (4) 生活の自立度 | |
| 喪失率を増加させる事情 | 喪失率を減少させる事情 |
|
・1人暮らしはできず、人の援助を受けて生活している。 ・金銭のやりくりを1人でできない。 |
・1人暮らしをしている、できていた。 ・金銭のやりくり(預金解約、カードローンの手続等)を1人でできる。 ・1人で電車、バスに乗って通勤している。 ・1人でタクシーを利用できる。 |
| (5) 本人尋問の不出頭 | |
| 喪失率を増加させる事情 | 喪失率を減少させる事情 |
|
|
・医証その他の資料によれば回復傾向が窺われ、かつ本人尋問に出頭できない合理的な理由がないにもかかわらず、本人尋問の出頭を拒否した(鑑定の実施を拒否した)。 |
| NO | 21 |
| 日付、出典 |
横浜地裁 H19.3.29 自保ジャーナル第1696号 |
| 年齢、職業、性別 | 19歳・女子・大学生 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例喪失率 | 79% |
| 裁判所の判断ポイント |
①集中力が持続せず、検査も途中でやめてしまうなど注意障害が認められる ②視覚・聴覚いずれの刺激の記憶も低下しており、記憶力には制限が認められるなど記憶障害が認められる ③衝動的に行動することがあるため計画的な買い物ができないなど遂行機能障害が認められる ④自身の感情をコントロールできず、対人面においてトラブルを起こしやすいなど対人技能に劣っている ⑤いったん思い込むとその内容を修正することが困難であるなど固執傾向が認められる ⑥反応に時間がかかるなど情報処理速度が低下していることから、生活に介助を要する状況が終身続くものと見込まれる |
| 原告の主張 | 79% |
| 被告の主張 | 争う |
| NO | 22 |
| 日付、出典 |
前橋地裁高崎支部 H18.9.15 自保ジャーナル第1686号 |
| 年齢、職業、性別 | 17歳・男子・高校生 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 79% |
| 裁判所の判断ポイント |
①原告が家庭内で問題になる軋轢を生じさせることはなく、一定の社会参加が可能である ②単純繰り返し作業などに限定すれば一般就労も可能であるが、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるといった問題がある |
| 原告の主張 |
①知能の大きな低下はみられないが記憶障害・記銘力障害は極めて重篤であること ②本件後遺障害は単純繰り返し作業に限定すれば原告に一般就労を可能とさせる程度のものであるが、新しい作業の学習ができなかったり、環境が変わると作業が継続できなくなること から、原告の障害は5級2号に該当すると主張した。 |
| 被告の主張 |
①原告が本件事故後に大きな回復をみせ、自転車通学や単独での外出が可能となり、高校を卒業して専門学校に入学していること ②診療録や各種検査記録から記銘力障害に回復が認められること ③医師が就労能力の改善を裏付ける診断をしていること ④性格変化もそれに伴う不穏な言動もなく、日常生活において近親者による介護あるいは介助が必要な場面は一切認められないこと から、本件後遺障害は7級相当程度であり労働能力喪失率は56%程度と主張した。 |
| NO | 23 |
| 日付、出典 |
名古屋地裁 H17.6.3 自保ジャーナル第1629号 |
| 年齢、職業、性別 | 17歳・男子・高校生 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 79% |
| 裁判所の判断ポイント |
①事故後にアルバイトに復帰しているが、他の従業員と比べ労働能力が劣っており、新しい仕事を覚えることができないなど部分的な仕事しかできない ②リハビリセンター病院からの回答 |
| 原告の主張 | 5級2号。79% |
| 被告の主張 |
①事故後、大学生活を送ったり、アルバイト(ケンタッキーフライドチキンの厨房)として稼動できるまでに回復していること ②仮に原告が仕事を行なううえで何らかの支障が生じるとしても、作業効率や作業持続力などに問題があるにすぎないことから、原告の後遺障害は9級10号が相当であり、労働能力の制限も35%を越えるものではないと主張した。 |
| NO | 24 |
| 日付、出典 |
名古屋地裁 H17.2.9 自保ジャーナル第1603号 |
| 年齢、職業、性別 | 27歳・男子・会社員(配置転換されているものの復職) |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号、左下肢機能障害10級7号、左足指機能障害11級10号(併合6級) |
| 比較基準喪失率 | 67%(6級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 67% |
| 裁判所の判断ポイント |
注意力障害、記銘力障害、言語性記憶障害(意味記憶の障害、見当識障害、短期記銘力障害)はある。 びまん性軸索損傷に伴う変化として、記銘力障害、言語性障害が認められる。 原告の勤務する会社の社長が後遺障害により仕事に支障が出ていることを具体的に述べており、それらの事情は検査結果等にも整合する。 外傷性てんかんの裏付けとなる他覚的所見等がない。過去にてんかんの発作が出現したことがあるとしても、現在はてんかんについては投薬により管理されている。 てんかん治療を受けていることは慰謝料で考慮する。 |
| 原告の主張 | 高次脳5級2号、左腓骨頸骨10級11号、左下肢短縮10級8号(併合3級)てんかんの症状があるからより労働能力が制限される。 |
| 被告の主張 | 7級4号(併合6級)より下。 |
| NO | 25 |
| 日付、出典 |
東京地裁 H15.8.26 自保ジャーナル第1520号 |
| 年齢、職業、性別 | 31歳・女子・有職主婦 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号、外貌醜状7級12号(併合5級) |
| 比較基準喪失率 | 56%(7級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 56% |
| 裁判所の判断ポイント |
喪失率では高次脳機能障害だけ考慮し、外貌醜状については慰謝料で考慮した。 平成11年8月2日時点での医証により、9級10号に該当すると判断されたが、新たに提出された画像検査資料などの医証によれば、11年当時は必ずしも判然としなかった脳外傷による高次脳機能障害が残遺していることが明らかになったことから、14年4月4日(訴訟提起から3、4年後)を症状固定日として扱うことが妥当と判断する。 |
| 原告の主張 | 不明 |
| 被告の主張 | 7級4号。56%以上。 |
| NO | 26 |
| 日付、出典 |
東京地裁 H17.12.21 自保ジャーナル第1637号 |
| 年齢、職業、性別 | 44歳・女子・パート主婦 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号、眼瞼障害12級2号、聴力障害14級相当、外貌醜状12級14号(併合8級) |
| 比較基準喪失率 | 35%(9級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 35% |
| 裁判所の判断ポイント |
喪失率では高次脳機能障害だけ考慮し、それ以外の障害については慰謝料で考慮した。医学的に知能低下や明らかな人格変化については証明されているものとは認め難い。 経時的に撮影された頭部画像についての検討では、脳萎縮、脳室拡大等の変化はなく、脳実質を損傷したとする明らかな所見はみられなかった。 |
| 原告の主張 | 高次脳7級4号、眼瞼障害12級2号、聴力障害14級相当、外貌醜状7級12号(併合5級)。79%。 |
| 被告の主張 |
|
| NO | 27 |
| 日付、出典 |
京都地裁 H16.3.10 自保ジャーナル第1572号 |
| 年齢、職業、性別 | 28歳・男子・司法試験浪人 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 比較基準喪失率 | 35%(9級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 35% |
| 裁判所の判断ポイント |
びまん性脳損傷に起因した記銘力が若干低下し、1回の刺激で記憶できる量がいくぶん減少したこと、画像所見上も軽度の脳萎縮が窺われることからすると、9級10号に該当する。 原告の記銘力等の脳機能が正常範囲にあったこと、原告が1人暮らしをしていたこと、原告は本人尋問の際、質問に対し概ねその意味を十分に理解した上、適切な回答をしていたことからすると、7級4号にはあたらない。 画像所見上軽度の脳萎縮が窺われることに鑑み12級程度の障害にはあたらない。 |
| 原告の主張 | 7級4号。56% |
| 被告の主張 |
12級程度 びまん性脳損傷の程度は中程度のものであって、一般の就業や日常生活に大きな支障を来すような重篤なものではなかった。 |
| NO | 28 |
| 日付、出典 |
横浜地裁 H15.7.31 自保ジャーナル第1520号 |
| 年齢、職業、性別 | 29歳・男子・会社員 |
| 自賠責等級 |
高次脳機能障害不明 複視12級 |
| 比較基準喪失率 | なし |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号、複視12級(併合4級) |
| 本判例喪失率 | 92% |
| 裁判所の判断ポイント |
①記銘・記憶力障害、知能低下・易怒性・暴力行為などの感情障害が認められること ②解雇されたことを認めるに足りる証拠はなく、仮に高次脳機能障害による作業及び環境への適応困難さを原因として解雇されたのが事実だとしても、その一事をもって「終身労務に服することはできない」と評価することはできない |
| 原告の主張 |
①状況に応じた衣類の選択ができなかったり、身体を拭かずに服を着てしまったり、トイレに行くのが間に合わず大小便を失禁してしまうことがままあること ②電車に乗ることはできるが切符を買うことができないこと ③電話での応対や来訪者との応対・初対面との人とのコミュニケーションには制限があること ④感情の起伏が激しく、怒りっぽく、話したいときに聞いてもらえないと暴言を吐いたり突っかかってきたりすること ⑤作業速度の遅さや職場での人間関係維持の困難さなどから公的施設での皿洗い作業を解雇となったこと から、原告の高次脳機能障害の程度は3級3号に該当し、喪失率は100%であると主張した。 |
| 被告の主張 | 79% |
| NO | 29 |
| 日付、出典 |
名古屋地裁 H12.10.18 自保ジャーナル第1387号 |
| 年齢、職業、性別 | 21歳・男子・大学生 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害不明 |
| 比較基準喪失率 | なし |
| 本判例等級 |
高次脳機能障害5級2号 |
| 本判例喪失率 | 79% |
| 裁判所の判断ポイント |
①原告が脳外傷を原因とする脳の機能障害により一般通常人と比較して著しく労働能力、特に社会生活能力が低下したことは明らかである ②公共交通機関を利用して単独で病院に通院することが可能となっている。 ③民間会社に障害者雇用として1年間の契約社員として勤務を始め、目立った遅刻・欠勤等もなくパソコンの入力作業に従事して25歳で時給1500円程度の給与を得ている ④正社員にはなれなかったものの契約の更新がなされて勤務を続けている ⑤自動車の運転が可能である |
| 原告の主張 | 本件事故により生じた記憶障害・思考障害によって状況判断能力を失ったため、原告は社会に適応することができず就労の可能性は閉ざされているとし、高次脳機能障害は後遺障害等級3級3号に該当すると主張した。 |
| 被告の主張 | 準社員待遇とはいえ就労しており、あるいは就労可能な障害程度であり、これを後遺障害等級3級とは認定できないことは明白であり、後遺障害等級5級2号に止まるものであると主張した。 |
| NO | 30 |
| 日付、出典 |
大阪地裁 H6.4.28 交通民集27巻2号534頁 |
| 年齢、職業、性別 | 43歳・男子・タクシー運転手(再就職した) |
| 自賠責等級 | 不明 |
| 比較基準喪失率 | なし |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 本判例喪失率 | 35% |
| 裁判所の判断ポイント |
CT、MRIの像からは必ずしも脳損傷、神経系統の損傷が明確に読み取れない場合であっても、実際には、脳・神経に機能的障害が存し、現実にかなりの神経症状が生じうることもまれではないことは周知の事実である。 本件においては、受傷部位が脳挫傷等である上、頭部CT、MRI上、左前頭葉、右側頭葉に脳挫傷が、脳波検査でも棘波、徐波がそれぞれ認められる。 よって、一般人の経験判断に照らせば、自覚症状は本件事故と因果関係を有する高度の蓋然性があるとみるのが相当と判断する 再就職し相応の収入を得ている。 |
| 原告の主張 | 7級4号 |
| 被告の主張 | 12級 |
| NO | 11 |
| 日付、出典 |
大阪地裁 H18.11.16 自保ジャーナル第1700号 |
| 年齢、職業、性別 | 18歳・男子・高校生 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号、嗅覚障害12級、顔面醜状14級(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | おそらく自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 95% |
| 裁判所の判断ポイント |
複数のアルバイトを試みるなど就労意欲自体はある。 以前の就業先の雇用主のような後見的な役割を果たす雇用主の下で就業する可能性がある。 年齢が比較的若年でありリハビリ等による持続力の回復を期待できる。 |
| 原告の主張 | 併合2級100% |
| 被告の主張 |
5級2号79% 易怒性は母のみに対するものである。就職先探しの状況などからみて相応の能力がある。自動車を運転している。本人尋問の発言に大きな矛盾はない。現在でも指導監督する者がいれば労働可能である。知能テストによれば将来の回復可能性は大きい。 |
| NO | 12 |
| 日付、出典 |
大阪地裁 H17.4.13 自保ジャーナル第1594号 |
| 年齢、職業、性別 | 38歳・男子・設計担当会社員 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号 |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 88% |
| 裁判所の判断ポイント | 単純軽作業を行うについては、意味内容や見通しなどについて相当の援助を得れば可能である。 |
| 原告の主張 | 不明。 |
| 被告の主張 | 2級100% |
| NO | 13 |
| 日付、出典 |
東京地裁 H12.12.12 自保ジャーナル第1387号 |
| 年齢、職業、性別 | 21歳・男子・大学生 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例喪失率 | 60% |
| 裁判所の判断ポイント |
①歩行や日常生活動作の障害は認められないこと ②コミュニケーション上の障害が軽度に認められること ③日常生活に支障はないが未だに安定した職には就けず、現時点において就職の見込みは立っていないこと ④感情抑制ができず、コミュニケーションをうまく取れないため対人関係でも問題を起こしがちであることから、仕事に就くことには今しばらくの努力を要するものと認められ、また、就職した際も安定して就業できるかは疑問であり、原告の担当できる職務内容もおのずから相当程度限定されざるを得ないと思料されるとし、労働能力喪失率60%とした。 |
| 原告の主張 | 不明 |
| 被告の主張 | 不明 |
| NO | 14 |
| 日付、出典 |
京都地裁 H16.2.18 自保ジャーナル第1572号 |
| 年齢、職業、性別 | 38歳・男子・学習塾教務職 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号、右股関節機能障害12級7号、左下肢短縮13級9号(併合4級) |
| 比較基準喪失率 | 92%(4級相当) |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害7級4号、右股関節機能障害12級7号、左下肢短縮13級9号(併合6級) |
| 本判例喪失率 | 67% |
| 裁判所の判断ポイント |
症状固定時の症状に照らすと、自賠責保険が5級2号に該当すると判断したことは適切であった。 しかし、①症状固定前に医師が改善可能性を示唆していた。 ②症状固定後は脳波が正常範囲内と診断され、また、表情があり、反応も早く、会話もスムーズになっている、自発的な発言も多い、当初人格変化と思われた無為自閉性、発動性の低下は現在改善が見られている、複雑な計算もできるようになったなどの改善傾向がみられた。 ③原告は原告本人尋問の期日に出頭しなかったという経緯があった。 このような事情から、現時点では相当程度回復している。 |
| 原告の主張 | 高次脳5級2号、右股関節機能障害12級7号、左下肢短縮13級9号(併合4級)。92%。 |
| 被告の主張 | 5級2号(併合4級)より下 |
| NO | 15 |
| 日付、出典 |
名古屋地裁 H19.5.8 自保ジャーナル第1696号 |
| 年齢、職業、性別 | 24歳・男子・アルバイト |
| 自賠責等級 | 高次脳5級2号、視力障害8級ほか(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | おそらく自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 90% |
| 裁判所の判断ポイント | 感情の起伏はほとんどみられず、周囲の状況に応じた適切な会話をすることができる。単純な作業はできる。現在も正社員として就労している。不自由ながらもパソコンのマウスを操作できる。 |
| 原告の主張 | 1級100% |
| 被告の主張 |
|
| NO | 16 |
| 日付、出典 |
名古屋地裁 H13.5.25 自保ジャーナル第1429号 |
| 年齢、職業、性別 | 31歳・男子・消防士(復職し配転勤務) |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号 |
| 比較基準喪失率 | 56%(7級相当) |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例喪失率 | 40%(60歳までの27年間)、56%(67歳までの7年間) |
| 裁判所の判断ポイント |
事故後復職し配転を受けてから既に4年以上稼働し、事故前の97%の年収を維持している。 もっとも、事故後は昇級昇格のペースが落ちている。後遺障害により管理職への登用は困難と認められる。 情緒不安定、感情失禁があり、独自の判断で行う作業や素早い行動などは困難で制限があり、事務系の比較的軽易な仕事しか遂行し得ない状態にある。 地方公務員の職にあるからといって安易に後遺障害によって退職となる可能性がないと断言することはできず、事故時の収入が少なくとも定年まで維持されて減収がないとまではいえない。 |
| 原告の主張 | 7級4号。56%。 |
| 被告の主張 |
7級4号。30%以下。 復職し、給与所得は事故前とほとんど変わらない。 |
| NO | 17 |
| 日付、出典 |
名古屋地裁 H16.10.6 交通民集37巻5号1354頁 |
| 年齢、職業、性別 | 21歳・男子・会社員(外壁板の検査作業) |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 比較基準喪失率 | 35%(9級相当) |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例喪失率 | 27% |
| 裁判所の判断ポイント |
仕事上、作業能率が悪くなったり、ミスが増えるなどしてきた。 収入の減少は見られないが、これは原告の努力と会社の一定の配慮による面もある。現在の勤務体制での勤務を継続することは困難であり、将来の減収は否定できない。 もっとも、従前の仕事をこなしている。また、原告の収入が減少していない。 |
| 原告の主張 |
9級10号。35%復職しているとはいえ従前と同水準の労務に服しているとは言えない。 現在の労務をこなすのに特段の努力を必要としている。 事故後4年を経過しても改善傾向はなく、将来の昇進にも悪影響を及ぼす。 |
| 被告の主張 | 20%以下。回復傾向ある。事故前と同じ職場に復帰して就労している。 |
| NO | 18 |
| 日付、出典 |
東京地裁 H15.2.24 自保ジャーナル第1496号 |
| 年齢、職業、性別 | 11歳・女子・小学生 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害9級10号 |
| 比較基準喪失率 | 35%(9級相当) |
| 本判例等級 | 不明 |
| 本判例喪失率 | 20% |
| 裁判所の判断ポイント |
①脳波に異常はなく、外傷性てんかんに移行する可能性も低い。 ②県立高校に通学し、頭痛薬を服用する程度で通院もしておらず、ほぼ痛常人と同様の日常生活を送っている。③原告は就労前であるため、現実に労働能力に制限があることや収入の減少が生じることが明白であるとは言い難い。 しかしながら、①びまん性軸索損傷等の傷害を負い、事故後約1週間は覚醒せず、その後約3週間は刺激すると覚醒するという状態であった、②画像上脳梁損傷が認められる、③集中力がなく記憶の保持に障害がある、④事故後6年以上経過しても知能指数に特段の変化がない。 |
| 原告の主張 |
9級10号。35% 脳挫傷に伴う身体的筋力低下がある上、強度の頭痛に悩まされている。 てんかん発症のリスク・ファクターは極めて高い。 認知障害、社会的障害等が顕著である。 不可逆的な損傷であり、改善は期待不可能で生涯継続する。 |
| 被告の主張 |
非該当(0%を主張していたものと思われる)。 運動機能に障害はなく、外傷性てんかんに移行する可能性は低い。知能指数も正常の範囲内である。 小児頭部外傷は重傷の機能障害もしばしば回復を見せるという特徴がある。予後は極めて良好である。 |
| NO | 19 |
| 日付、出典 |
東京地裁 H16.9.22 自保ジャーナル第1562号 |
| 年齢、職業、性別 | 16歳・男子・高校生 |
| 自賠責等級 |
高次脳機能障害5級2号 右同名半盲13級2号、複視12級(併合4級) |
| 比較基準喪失率 | 92% |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 92% |
| 裁判所の判断ポイント |
①事故後の症状の改善がある程度認められるものの、認知障害・記銘力障害が相当程度改善されたとはいえないこと ②事故後大学へ進学しているが、これは原告自らの力で授業の内容を理解し、他の学生と同様に課題や試験をこなして得られた結果・成績ではないこと ③通常通りの労働が期待できるとは言い難いこと ④易怒性・易興奮性が認められること |
| 原告の主張 | 併合4級。 92% |
| 被告の主張 |
①事故後、原告が大学に進学していること ②労務内容の制限は受けるが一般就労を維持する能力は認められること ③国の支援プログラムや通所施設での訓練を通じて、広い職種の選択が可能となること から、原告の高次脳機能障害は9級(労働能力喪失率35%)程度が相当であると主張した。 |
| NO | 20 |
| 日付、出典 |
大阪地裁 H14.10.21 自保ジャーナル第1500号 |
| 年齢、職業、性別 | 27歳・男子・同族会社役員 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 比較基準喪失率 | 79% |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 79% |
| 裁判所の判断ポイント |
①ベントン視覚記銘検査・三宅式対語記銘力検査等の結果 ②症状固定後も、やかんを空焚きしてしまったり、子供のミルクを作る際に5杯目を越えると何杯目かを数えられない ③復職を試みた際、指示された作業内容を覚えておらず、作業内容を記載したメモを渡されてもそのこと自体を忘れてしまう等の症状が残っている |
| 原告の主張 |
①強い記銘力障害・計算障害等の後遺障害が残存していること ②無職であること ③記憶障害の改善が最早望めないこと から、原告が終身労務に服することができないとし、後遺障害の程度は3級に相当すると主張した。 |
| 被告の主張 | 争う。 |
| NO | 1 |
| 日付、出典 |
京都地裁 H17.12.15 自保ジャーナル第1632号 |
| 年齢、職業、性別 | 43歳・男子・嘱託勤務 |
| 自賠責等級 |
高次脳機能障害5級2号 嗅覚障害12級相当 味覚障害12級相当 (併合4級) |
| 比較基準喪失率 | 79%(5級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 85% |
| 裁判所の判断ポイント |
①記憶力・持続性が低下し、協調性にも問題はあるが、デザイン能力は事故後も低下していない ②退職はあくまで自主的にした ③将来の回復可能性は否定しきれない |
| 原告の主張 |
①就労の意思・意欲が皆無であること ②医学的に将来の改善可能性が説明できないこと ③精神障害者の就労は厳しい社会的現実が存在すること を理由に喪失率100%を主張した |
| 被告の主張 | 原告の後遺障害は9級10号に相当すると主張①カルテ等の医証によれば、自賠責が認定した5級2号は疑問と主張した |
| NO | 2 |
| 日付、出典 |
東京地裁 H18.3.2 自保ジャーナル第1650号 |
| 年齢、職業、性別 | 25歳・女子・ガラス工房勤務 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害5級2号、嗅覚障害12級、醜状障害7級12号(併合3級) |
| 比較基準喪失率 | 79%(5級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 92% |
| 裁判所の判断ポイント |
高次脳5級2号以外の後遺障害は労働能力に影響を与えないと認定されているので、喪失率は5級相当の79%と認定されるのが通常であるところ、92%を認定した。 人格障害、易怒性・易興奮性、てんかん発作等のため現在も就職できていない点を重視した。 |
| 原告の主張 | 高次脳5級2号等で自賠併合3級に認定されている他、嗅覚障害等もあることを理由に併合2級(喪失率100%)を主張した。 |
| 被告の主張 |
人格水準の低下は顕著でない。 易怒性は事故後の精神的ストレスが原因に過ぎない。 てんかんはてんかん剤でコントロール可能である。 9級(35%)を主張した。 |
| NO | 3 |
| 日付、出典 |
名古屋地裁 H18.1.20 自保ジャーナル1649号 |
| 年齢、職業、性別 | 26歳・女子・会社員 |
| 自賠責等級 |
高次脳機能障害7級4号 右動眼神経麻痺併合11級(併合6級) |
| 比較基準喪失率 | 67%(6級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 75% |
| 裁判所の判断ポイント |
①IQが110前後あり正常域に属している ②記憶力・記銘力を除く能力が良好に保たれている が記憶力・記銘力の障害の程度が強いことを考慮すると、実際に一般の就労を果たしてこれを維持するには非常な困難が伴うことが認められるとした |
| 原告の主張 | 記憶力・持続力・集中力及び問題解決能力が著しく低下しているため、高次脳機能障害は5級2号(併合4級)に該当し、少なくとも80%の喪失率が認められるべきと主張した。 |
| 被告の主張 | 尋問が円滑に進んでおり、意思疎通能力・問題解決能力が半分以上喪失した状態にあるとは認められない等を理由に後遺障害等級は7級が相当と主張した。 |
| NO | 4 |
| 日付、出典 |
横浜地裁 H12.8.4 自保ジャーナル1370号 |
| 年齢、職業、性別 | 53歳・男子・焼き鳥屋・大人のおもちゃ店の経営 |
| 自賠責等級 |
高次脳機能障害7級 その他は不明 |
| 比較基準喪失率 | 56% |
| 本判例等級 |
高次脳機能障害5級2号 左尺骨偽関節・左膝同様関節及び左腓骨神経麻痺12級7号(併合4級) |
| 本判例喪失率 | 92% |
| 裁判所の判断ポイント | 鑑定の結果、知的能力を要する労働や複雑な人間関係が存在するような仕事は不可能であるが、精神的・心理的ストレスが少ない単純な作業は短時間かのうであるとされていることから、高次脳機能障害について5級2号に該当するとして、喪失率を92%と認定した。 |
| 原告の主張 | 自賠責で7級となったのは不十分な診断書に基づく認定であったとし、他人の十分な指導と援助のもとで精神的・心理的ストレスの少ない短時間のみ行なう単純な軽作業を現実に想定することは極めて困難であることから、就労しうる労働は存在しないとして、高次脳機能障害は2級3号(少なくとも3級3号)に該当すると主張した。 |
| 被告の主張 | 本件事故に起因する意識障害は事故後に軽快改善されたことが明らかであること、及び、てんかん発作が全く現出していないことから、原告の後遺障害は9級10号を越えるものではないと主張した。 |
| NO | 5 |
| 日付、出典 |
仙台地裁 H20.3.26 自保ジャーナル第1734号 |
| 年齢、職業、性別 | 55歳・男子・無職(転職の準備中) |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級4号、左鎖骨の変形障害12級5号、左耳難聴12級(併合6級) |
| 比較基準喪失率 | 67%(6級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 73% |
| 裁判所の判断ポイント |
精神・神経症状を考慮すると、実際に就労することには非常な困難を伴うだろうことは容易に想像できる。 現在勤務を続けられているのは、家族の援助と、使用者が市の外郭団体であり、原告の状況に配慮をしていることが容易に想像できる。 この点を考慮して、喪失率は、6級相当の67%と5級相当の79%の中間値である73%とする。 |
| 原告の主張 | 高次脳5級2号、左鎖骨変形障害12級5号、左耳難聴12級、嗅覚障害12級(併合4級)90% |
| 被告の主張 | 高次脳7級4号、左耳難聴12級(併合6級)。67% |
| NO | 6 |
| 日付、出典 |
東京地裁 H8.2.28 自保ジャーナル第1177号 |
| 年齢、職業、性別 | 60歳・男子・兼業農家従事者 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害7級 |
| 比較基準喪失率 | 56%(7級相当) |
| 本判例等級 | 自賠と同じ |
| 本判例喪失率 | 70% |
| 裁判所の判断ポイント |
知能テスト等に著名な機能低下が認められる高次脳機能障害である。 症候性てんかんに対する抗けいれん剤の投与の必要がある状態である。 医師から軽易な労務以外の労務は困難であると診断されている。 1人で日常生活を送ることは極めて困難な状態である。 原告は尋問にも耐えられない状態である。 以上によれば、5級の程度には至っていないものの、7級としては重篤な部類に属していると認められ、原告が今後外部に勤務して収入を得ることはほとんど不可能と認められることを考慮すると、70%を喪失したと認められるのが相当である。 |
| 原告の主張 | 7級 |
| 被告の主張 | 不明 |
| NO | 7 |
| 日付、出典 |
大阪地裁堺支部 H18.4.14 自保ジャーナル第1662号 |
| 年齢、職業、性別 | 25歳・男子・電車車掌 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害2級3号 |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号 |
| 本判例喪失率 | 79% |
| 裁判所の判断ポイント |
①預金解約やカードローンなどの手続を一人でしているのみならず、職場で上司と就業継続についての会話をしていることが認められるが、仕事のやり方を教えてもらってもできなかったこと等から、意思疎通能力は半分以上失われていると考えられる ②職場において通常予定されている職務につき教えられた手順どおりに仕事を進められなかったこと等から、問題解決能力はその半分以上が失われていると認められる ③日常生活の金銭管理について短絡的な消費に走っていることから、作業付加に対する持続力・持久力が幾分か減弱していると認められる ④帰宅するのに夜行バスやタクシーを利用していることから、社会行動能力はほとんど失われていないと認められる ⑤配転復職後に実際に遂行しているのは極めて簡易な業務である |
| 原告の主張 |
①復職は会社の福祉的配慮にすぎないこと ②いつまで就業できるかわからないこと ③退職すれば他に就職できる可能性はほとんどないこと ④障害に回復の見込みはないこと から、100%の喪失率を主張した。 |
| 被告の主張 |
①原告は一人で電車に乗って職場に通勤し、週5日午前9時から午後5時まで働いていること ②知能検査の成績によれば知的能力が高いこと ③標準失語症検査の精査機からは、会話能力の障害はそれほど重度ではないこと から後遺障害等級が5級よりも重いことはありえないとして、喪失率は72%よりも制限的に認めるべきと主張した。 |
| NO | 8 |
| 日付、出典 |
横浜地裁 H18.11.8 自保ジャーナル第1676号 |
| 年齢、職業、性別 | 52歳・男子・会社員 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号、右視野欠損13級2号、左膝関節機能障害12級7号、右手指機能障害11級9号(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 |
高次脳機能障害5級2号 右視野欠損13級2号、左膝関節機能障害12級7号、右手指機能障害11級9号(併合4級) |
| 本判例喪失率 | 92% |
| 裁判所の判断ポイント |
①原告が自家用車と電車を乗り継いで一人で通勤していた ②復職後は書類のファイリングなどの仕事を単独でしていたが集計作業などは補助者が必要であった ③通勤だけではなく買い物の際も自家用車を運転している |
| 原告の主張 | 高次脳機能障害は3級3号に該当し、併合第2級の後遺障害を負ったと主張した。 |
| 被告の主張 |
①WAIS-R検査所見で著名な改善が見られること ②事故後元の職場に復帰していること ③労災では後遺障害等級第8級の認定にとまっていること から原告の後遺障害等級は9級10号(重くとも7級4号を上回ることはありえない)と主張した。 |
| NO | 9 |
| 日付、出典 |
広島高裁 H16.11.5 自保ジャーナル第1577号 |
| 年齢、職業、性別 | 20歳・男子・会社員 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号 |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 |
高次脳機能障害5級2号 左尺骨偽関節・左膝同様関節及び左腓骨神経麻痺12級7号(併合4級) |
| 本判例喪失率 | 79% |
| 裁判所の判断ポイント |
①自動車教習所に通うほか、定時制の工業高校に通学し卒業している ②一人で徒歩あるいは自転車に乗って外出し、買い物をしている から、就労可能性を否定することはできない |
| 原告の主張 | 不明 |
| 被告の主張 | 不明 |
| NO | 10 |
| 日付、出典 |
岡山地裁倉敷支部 H18.11.14 自保ジャーナル1680号 |
| 年齢、職業、性別 | 28歳・男子・不明 |
| 自賠責等級 | 高次脳機能障害3級3号、右同名半盲9級3号(併合2級) |
| 比較基準喪失率 | 100% |
| 本判例等級 | 高次脳機能障害5級2号、右同名半盲9級3号(併合4級) |
| 本判例喪失率 | 92% |
| 裁判所の判断ポイント | ①症状固定後における各種検査の結果が概ね改善傾向を示している、②症状固定後、記憶力、易刺激性、衝動性、意欲・自発性、持続力・持久力がある程度改善している、③日常生活能力もある程度回復している。よって、口頭弁論終結時においては5級2号程度である。 |
| 原告の主張 | 併合2級100% |
| 被告の主張 |
症状固定以降も改善傾向にあり、少なくとも現時点においては5級2号該当程度にとどまるから、右同名半盲と合わせても併合4級にとどまる。 |